2019年11月28日
百貨店 川崎西武 「川崎事件。」 ポスター(1988年撮影)
[黒田]
そういう面で見ると、今の広告業界で活躍している方って多数いらっしゃると思うんですけど、作家活動とプロジェクトを両立されている方は稀有なイメージがありますよね。作家として活動する過程で広告に求められるというケースはよく見ますけど。
しかし白鳥さんの写真って、プロジェクトなのにファインアートさを感じますよね。
[白鳥]
それはね、いいアートディレクターと出会えたことがね、すごく大きい。大貫(卓也)くんの言うこと聞いてると、正論だから聞こうみたいになるんですよ。
大貫くんは言いたいことは言うけども、でもそうしてるうちにお互いに評価されていったっていういいリアクションだったんですよ。
[黒田]
大貫さんとのコラボレーションはすごく目に付きます。あとは、お仕事でなく、パーソナルワークとして撮影されている写真もすごく作家性が前に出ていたり、どこか海外のような雰囲気を感じます。
[白鳥]
そう。昔にね、偶然被っちゃってるフィルムを博報堂の写真部の人からもらって知らずに撮ったんですよ。それがまあ全部被っていた。その色味が、グリーンに転がったのですごく良かった。これを作品のテーマにしようかなと思って撮り出して。あの当時はね、全てがアンチテーゼだったわけ。フラストレーションの溜まる仕事に対する。
[黒田]
その時は仕事に還元できるものもあったんですか?
[白鳥]
あったあった。
[黒田]
そういう意味では仕事と作品のいい循環になっていたんですね。こういう言い方はあれですけど、もともと作家になろうとかではないんですよね?
[白鳥]
もともとはね、僕は資生堂に最初に入りたかったから助手で雇ってもらって。当時花形だった横須賀(功光)さんみたいになりたかった。でも大貫くんとやることになって変な方向に捻じ曲げられて。そのおかげで今があるんだけど。
印刷 企業広告 新聞(2013年撮影)
[黒田]
ズバッとお聞きしちゃうんですが、自分に才能があるって気付いたタイミングとかあるんですか?
[白鳥]
今でもあると思ってない。僕はね、天才と秀才がいるとしたら秀才の努力型だと思っていて。王さんと長嶋さんみたいなもんで、記録の王さんに対して記憶の長嶋さんは永遠にミスタープロ野球なわけですよ。
僕はそんなに閃いて撮るってよりかは、理詰めで撮っていると思っている。考えるタイプ。
[黒田]
へー意外ですね。なるほど、ライティングとかですかね。
努力っていう話だと、自分の型にはめるというよりかは、何が来ても打ち返そうみたいな気合が感じられて。そこに白鳥さんなりのユニークさが詰め込まれていますよね。その辺りって技術とか努力でどうにかなるものなのでしょうか?
[白鳥]
うーん、技術と努力以外にも世の中の流れとか、広告業界のトレンドとかを見極めていることが大きいかな。意外とインプットが好きですよ。
[黒田]
それは若手の時もそうだったんですか?
[白鳥]
そうだね。僕が博報堂の写真部にいたのが16年間なんだけど、フリーの写真家に頼んだ仕事をADから見せてもらったらちっとも良くない。俺でも撮れるじゃんと思った。
[黒田]
やっぱりあるんですね。
[白鳥]
あえて名前は言わないんだけど。高い金払って何で普通の写真撮らせんだよみたいな。
[黒田]
確かにそういうケースは往々にしてありますよね(笑)
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2024年10月25日 発行
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