2019年3月28日
[高井]
黒田君の写真は奥が深いというかいやらしい感じがするよね。
[黒田]
ちょっとマニアックかもしれないですね。一見、普通ぐらいのシーンに違和感をもたせるのが好きです。どちらかと言うと。ぱっと見てクリエイティブなものもやるんですけど。
[高井]
小説でいうと、例えば『こころ』とか。もうちょっと奥にいくと夢野久作とか。その辺のミステリーとかに入り始めるかんじかな。
[黒田]
全然わかりませんが、好きな小説は戦争と平和です。
[高井]
もっとバタイユあたりまでいくともっとドロドロしているよね。
[黒田]
自分の写真、そんなにドロドロしていますか(笑)
[高井]
痛いんだけど気持ちいいという世界。
[黒田]
ハードル高いですね。
では普段創作されている詩はどうですか?詩はライフワークですか?けっこう好きなんですよね。
[高井]
詩は、自分でわからないから面白いんだと思う。
[黒田]
ああそうなんですか。
最近Facebookとかにも投稿していますけど、普通に年鑑のコメントとかにも詩が書いてあるわけじゃないですか。
[高井]
たぶん、文章でもって「あっ、世界に入り込めるな」と思ったのが高校生の時なんだよね。
[黒田]
なるほど。
[高井]
例えば『赤と黒』みたいな。人生で生きていくには赤と黒、軍人になるか、僧侶になるかというのがあって、それと人間には知性というものと、知性と反対の動物的なところがあるからそれが人間の葛藤だと。そういうところのストーリーがあの本を読んで自分の頭の中にそういう映像が出てくるぐらいのショックがあったんだよ。
[黒田]
なるほど。けっこう『赤と黒』はえげつなさありますもんね。好きですけど。
[高井]
要するにド田舎での高校生活はそんなヨーロッパ的なことなんて知らないはずなのに、そこが膨らんでいくのが言葉の面白さだよね。
それがあって、ずっと写真をやっていたんだけど写真に言葉を入れたりするようになったの。例えば「愛しています」とか「愛」とか入れるとそれだけでろいろな世界が広がるわけでしょ。
[黒田]
写真と言葉はマリアージュがありますよね。どちらも食い合わせが良いもの同士でというか。
[高井]
一言、二言、入れることによって写真のない世界にも飛んでいけるかもしれないって思うんだよね。まだまだ飛んでいってないからね。
[黒田]
なるほど。それはわかります。いまだとSNS的とも言えるかもしれないですね。
[高井]
言葉が持つ力はすごいから。世界が膨らんでいくんだよ。
[黒田]
確かに言葉の力はすごいと思います。むしろ不可欠なところもあるじゃないですか。
でもスタンダールは意外ですね。さっきの童話の話じゃないですけど『赤と黒』は心情世界のさらにその先みたいな印象です。自分の写真には親しい空気を感じますが。
[高井]
知と愛とかね(笑)
[黒田]
はい。不倫だとかどろどろした内容ですよね。
[高井]
そういう作品だとつきものだよね。
[黒田]
栄光と没落みたいな感じあるじゃないですか。しかもちょっとミステリー要素もありますよね。
[高井]
ミステリーと言われると、やはりエドガー・アラン・ポーとかだよね。
[黒田]
そうですね。サスペンスとミステリー。『赤と黒』は文学的な印象でしたが。
[高井]
日本の小説にも土臭いものから大正期から明治の小説とか、意外と面白いものがあるんだよ。僕はいわゆる土着的な世界が嫌でヨーロッパの作品を好んで読んでいたけど。
いろいろヨーロッパ、アメリカの文学を読んで、エドガー・アラン・ポーから江戸川乱歩にいって橘外男、久生十蘭などの日本文学に戻ってきて、ちょっとふらふらしていたらまた違った世界があったわけ。日本には芥川龍之介や夏目漱石みたいな真面目な小説しかないかと思ったらそうじゃなくて、ちょっと変な、秘密の花園じゃないけど怪しい匂いがする小説があるわけなんだよ。
[黒田]
それは確かにわかりますね。芥川龍之介が真面目かどうかはわかりませんが。
[高井]
夏目漱石なんて真面目だよね。
[黒田]
夏目漱石はそうですね。
[高井]
面白くもなんともない教科書的な書き方だと思う。
[黒田]
まあそうですね。ただ、真面目でも宮沢賢治なんかは琴線ダイレクトに触れてきます。
[高井]
なるほどね。
最近、全然本を読んでないんだよ。
[黒田]
自分も読んでもビジネス書とかです(笑)
[高井]
老眼になっちゃってね(笑)
おそらく一番を本を読んていたのは高校生の頃。いわゆる図書百選みたいな本をうろちょろしていて、それから20歳か23歳ぐらいにかけて色々読んだんだけど。
[黒田]
老眼とか考えると、オレもいまのうちに読んでおかないとなって思いますね。
[高井]
トム・ソーヤーの冒険とかも読んだよ。
[黒田]
よく覚えていますね。僕は何も覚えていないもんな。すごいです。
[高井]
無茶苦茶になっているんだよだから。いろいろごっちゃで読んでるから。
[黒田]
頭の中で(笑)
[高井]
『嵐が丘』を読んで、『風と共に去りぬ』も読んでもうめちゃくちゃになっているわけ(笑)
[黒田]
『嵐が丘』はアメリカでしたっけ?『嵐が丘』を書いたのは女性でしたよね。
[高井]
エミリー・ブロンテだね。
[黒田]
そうだと思います。
トルストイとかも長いですよね。1つの物語が7冊とかあるじゃないですか。読むのが大変でした。
[高井]
トルストイのロシアつながりでいうと、『罪と罰』を読んで僕はできている人間だから罪を犯していいと若い時には思ってたな(笑)犯罪を犯したって僕は許されている側の人間だと(笑)
[黒田]
こんなおばさん、殺したっていいと(笑)
[高井]
そうそう、若いときの話だけどね(笑)
[黒田]
あのあたりは面白いですよね。あ、カラマーゾフとかはミステリーじゃないですか。
[高井]
そうだね。あ、『たたみ男』(著:筒井康隆) は知ってる?
[黒田]
知らないですね。
[高井]
朝起きたら顔が畳になっていたっていう話なんだよ。
[黒田]
カフカの『変身』みたいですね。
[高井]
ほぼ同じだね。
[黒田]
いや面白いですね。
詩の話に戻りますけど、このタカシ君というのがお気に入りらしいですね。
[高井]
そう。思い入れかな。タカシ君は同じ小学校に通っていて、なんだかんだ言って卒業してからもいろいろな電話をして連絡をとっているいたりする小学校からの友だち。
[黒田]
へえ。
[高井]
彼の頭の中は小学校からずっと止まったままでね。電話がかかってきたら向こうが喋り続けて電話が切れなくて延々と電話してる。
[黒田]
まだかけてくるんですか?
[高井]
今はもうかかってきたら大変なことになるからかかってこないようにしているけどね(笑)
[黒田]
なるほど(笑)
[高井]
タカシ君からしたら小学生、中学生の時にあれこれやって楽しかった記憶が今も残っているんだと思う。
[黒田]
なるほど。
[高井]
今はずっと単純作業オンリーの作業をしているんだけど、やっぱりつまらないんだろうな。
[黒田]
楽しかった思い出がずっとあるんですね。
[高井]
写真を見たときに、まったく関係ない写真なんだけどふと思い出が出てくる時ってない?
[黒田]
ありますね。
[高井]
そういう記憶が蘇る感覚に近いんだと思う。
[黒田]
音楽とか匂いとかでも思い出したりしますよね。
[高井]
そうだね。
音楽はある意味ずるいと思う。あれはもう引き金がいっぱいあるから音がするだけですぐにいろいろなものが蘇ってくるでしょ。
[黒田]
わかります。
[高井]
「君を愛しているよ」なんて音に合わせて言ったら一発で落ちるよ。
[黒田]
確かにそうですね。
[高井]
ミュージシャンはずるいと思うなぁ。
[黒田]
そうですね。何かと強く紐付いていると聞いた時に思い出しちゃいますよね。
[高井]
今やっているボヘミアン・ラプソディなんかもそうでしょ。
[黒田]
そうですね。観に行ったあとは聴き続けちゃいますし。あと自分は良い映画をみるとそのサントラを延々と聞き続けたりします。
[高井]
いやー、音楽はずるいね。
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2024年10月25日 発行
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