2019年3月28日
[高井]
ネット時代になって、SNSに写真をあげるのが当たり前になって、最近の子たちはこう、風景とも違うし日常写真とも違うしどちらかというと日常写真に近いんだけど、もっと身近な雰囲気が出てきたよね。アマチュアでもしっかりした写真を撮ろうというところから変わってきているように感じる。
[黒田]
写真を撮ろうと構えてはいないんだけどクオリティはいい写真が増えてきたということですかね?
[高井]
クオリティよりも前の心構えの話で、おそらく写真をある程度撮ろうとか、趣味にしようという人が新しく写真を始める時って、旧来だと、裏で光を見ましょう。構図もしっかりしましょう。タイミングを図りましょう。フレーミングも決めましょう。いわゆる既存のパターンのお手本があった。アマチュア写真家もそのお手本に準じて真似してきた。このパターンが旧来のアナログ時代の写真のパターン。
次に来たデジタルの時代では、写真も、カメラも大きく変わった。全部写るようになった。それからいわゆる普通のセオリーが難しいことじゃなくなり、ただのお手本じゃつまらないので、いくら真似して撮ったとしてもただなぞるだけのただのコピーになってしまう。いままでの概念から、考え直してみたのが鈴木理策さんの新しく展示された写真だった。
理策さんの写真はそういう今までのパターンではない。自分自身の視点ではなくて自分と一緒にいるカメラの視点で写真を撮っている。おそらく写真にしようという目線で撮った写真はもう飽きられてつまらない写真になってしまってるんだよね。
でも理策さんの場合は、絵描きさんにインスパイアされていて、自分の理性が感光版になったように外の空気をありのままに伝えるような、感覚的にそのまま写そうとしている。
[黒田]
感覚的なものを、漠然としたものをそのまま絵にしようということですか?
[高井]
理策さんは絵画でいうと例えば印象派のモネのように具体的な線とかラインとかそういうことじゃなくて、光でもって絵を書いたあの感覚を写真で捉えようとしたんじゃないかな。
[黒田]
なるほど。
[高井]
だから従来のマイケル・ケンナみたいなきちんとした構図。しっかりとした光。ベースにのっとった、いわゆる写真としての技術が表れた写真という流れから、そのまま光を感覚として捉えるようなところに入りつつあって、一般の人もいわゆるカメラの学校やなんかで習った教科書的なやり方ではなくて、本当に感覚的な音楽をやっている人、美術をやっている人が写真界隈に入り込んできているから、そういう人たちの方が割と斬新で新鮮な写真を撮るようになったんだと思う。
[黒田]
それは納得感ありますね。
[高井]
光の感覚的なものを捉えて、変に形を固めないでそのまま捉えてそのままアウトプットしているような写真がバンバン出始めてると感じる。
だから良い、悪いという判断ではなくなってきているんだよね。
[黒田]
何がいいとかではないですよね。
本来、趣味でただなんとなく撮ろうというところから始まっていると、フレーミングとか型にはまる型もわからないから、おそらくやりたいように自分がいいと思うものを突き詰めているんでしょうね。
[高井]
広告でもなんでもないしアプリの写真なんかは割とそうだよね。だってセ
オリーも何もないわけだから。黒田君がAPAアワードで入賞した水に飛び
込む写真なんかはパッと見て感覚的に撮ったんじゃない?
[黒田]
そうですね。
[高井]
その感覚はやっぱりカメラがよくできているからだと思う。昔のアナログ的なカメラではなかなかあんな感じに写らないんだよ。
昔のカメラだったらもっとぶれているし、ああいう日にあそこには持って
いかないね。
[黒田]
なるほど。怖いですもんね。
[高井]
大切なものだからね。こういう感覚では使わないかな。
[黒田]
そうですね(笑)
[高井]
今はGoProがあったりどんどん感覚的な世界になっていると感じるね。
[黒田]
カメラがイージーになってきているということですよね。
[高井]
そうそう。
だから液体を人物にかけたりだとか、どろっとしたものを人物の顔にたらして撮るような写真を撮れるようになったわけ。昔はかなりのテクニックがないとできなかった写真だよね。ストロボの光を当てるのをちゃんと計算しながらじゃないと撮れなかった写真が簡単に撮れるようになってきているわけなんだよ。
[黒田]
それ僕の写真のこと言ってますよね(笑)
[高井]
ちょっと感度を上げれば撮れちゃう時代になってる。
昔の話でいうと、撮れるんだけど相当な数のライティングが必要になってくる。
[黒田]
そうですね。20灯とか必要になりますよね。
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2024年10月25日 発行
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