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アートは人を救うものだと思っている【写真と生きる】

アートは人を救うものだと思っている【写真と生きる】

2018年7月26日

北海道の東川町

[速水]
そして、北海道の東川町がございます。実は私たち御代田町のプロジェクトは地方創生の側面もかなりあると思っていて。

今、日本は、世界中のどこの国も未だかつて直面したことがないような急激な人口減にさらされています。そんななか、各自治体がどうやって存在感を持って存在し続けられるかを考えられていると思うんですね。

以前からそういう危機感はあったものの、そろそろ本気でみんな焦ってきた、この先どうなるんだろう、と思ってきていているところですが、東川町は1985年からそれを考えている。

[黒田]
写真甲子園のところですよね。しかし1985年からなんですね。30年以上前じゃないですか、何かあったんですか?自分は2歳の頃ですが記憶がなにもありません。

[速水]
そうですよね。これをある一定の年齢層の方に言うと「おおっ」となるんですが、竹下内閣が1億円ずつ自治体に配ったことがあるんですよ、ふるさと創生交付金というもので町おこしをしなさいと。その時、東川町は文化にお金を使うべきだろうと決心して「写真の町宣言」というものをするんです。

写真の町宣言とはどういうものかというと、東川町は美瑛町の隣なんですね、美瑛町は、風光明媚な場所で、その隣にあるにもかかわらず東川町はその当時は有名ではなかった。でもやはりこの美しい北海道の自然の中で、写真を撮って撮られて嬉しい町になろうと決心をする。それが写真の町宣言なんですけど、この宣言がすごくいいのでぜひ皆さん見ていただきたいのですが……。

写真の町宣言をしたことによって彼らは、「心のこもった”写真映りのよい”町」になろうと決心した。そしてそれを守り続けてきた。それはまさにブランディングだと思うのですが、「東川町らしさ」を彼ら自身が形成してきた。その結果、北海道では珍しく移住者が10数%ずつ増えているそうです。

[黒田]
10数%ですか!?

[速水]
地方創生の観点で言えばかなり成功されている町なんです。

[黒田]
驚異的な数字じゃないですか。

[速水]
とにかく彼らは文化にお金を使って、税金も使っている。写真の町宣言もそうですし、ご存知の写真甲子園というイベントも毎年開催されているんです。写真甲子園は、日本中の高校生たちが東川町に集って町の風景や人々を写真に撮って組写真で競うイベントです。そうやって人間の作り出した写真文化と共に生きることで存在感を出していこうということをして成功しているという。ちなみに賃貸の入居率100%なんですって。

[黒田]
そんなわけあるんですね(笑)

[速水]
もう一つすごいのがアマナのカメラマンが東川町を撮り続けていた中で、移住をしてしまいました、アマナを辞めて。

[黒田]
むちゃくちゃじゃないですか(笑)

[速水]
そう、むちゃくちゃすごいんですよ!

[黒田]
これは行ってみたくなりますね〜。

[速水]
たとえば、東川町に「毎日が天然水」というキャッチコピーがあります。これはなにかというと、東川町は”3つの道”がないといわれていて、「1つ目、上水道がない。2つ目、国道がない。3つ目、鉄道の駅がない。」と。そのことを、昔は東川町の人たちが少し引け目に思っていた頃があったと聞いています。

でも私たちから言わせれば東川町って大雪山がある町なんですね。大雪山の雪解け水が井戸水になって、蛇口をひねれば出てくるなんて素晴らしい町じゃないですか。上水道がないということ以上に価値があるものってありますよね。そんな思いをこめて「毎日が天然水」ということを謳っているんだと思います。

こういったブランディング……いわゆる町の既にそこにある地元愛などをきちんと拾い上げて分かりやすく提示してあげることで、さらにその町らしさがきちんと皆さんに伝わって、良い町になっていくという好循環をうむ。日本でもこうやって写真文化と共に生き、歩んでいる町がきちんとありますよという。

[黒田]
あーなるほど。町としても特長があって素敵なんですね。もちろんそれを魅力的に打ち出している点もあるんでしょうけど。そのあたりは発想の転換なんでしょうね。

しかしこと写真に関して言えば、1985年の段階で写真の町宣言というのは考えられないテーマですね。今ほど写真の敷居は低くなかったでしょうから。

御代田プロジェクトもこういった地方創生の側面があるんですか?

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