2017年12月14日
[護]
フィルムカメラに関しては ストーリー性 を求めてしまいますね。
[黒田]
ストーリーを感じさせる写真って、自分の中でもテーマにあるので共感できます。そういうのって好みの話で良し悪しじゃないじゃないですか。ただ単純に撮るにあたって、普通にポートレートで背景をただボケさせるとか、その人を一番かわいく写そうとか、人柄を映そうとか、関係性を写そうとかそういうことには興味なくて、写真を見て背景を連想してもらいたいというか…、目線を見て、カメラマンがいて、モデルがいるんだなという写真には興味ないです。
[護]
わかります。
[黒田]
なんか背景にはストーリーがあるぞという、そういう写真が好きで。一体この状況は何なんだろう?と連想させるような。護さんはそういう写真を撮っているじゃないですか?
[護]
どうですかね。撮れているのかはわからないですけど。
[黒田]
最初に見た時に、そう思ったんですよね。何者なんだって思いました。護さんは今までも活動されてきたと思うんですけど、自分はひきこもりで世の中を知らなくてですね。後からいろいろ調べさせてもらったんですけど、謎しかなかったです。趣味でやっている、フォトグラファー、ポートレートフォトグラファーとかでも、そういう写真を撮る人ってけっこう少ないですよね。日本ってグラビア的な写真が多いと思っていて、被写体と向き合っている?写真がすごく多いように感じるんですよね。
それはそれでいいんですけど、映画的な写真をあんまり見ない印象だなあと感じている中で、護さんの写真はちがったんですよね。「これはプロットというか、設定なり背景とかがあるんだろうな」って感じられる写真でした。そういうのが好きなんですよ。
道端のアンティークな椅子に座っている日中の写真とかあるじゃないですか。あれも「なんなんだろ、これ」みたいに思います。
そういうところにちょっと普通に撮っているというより、 ストーリー性が強い写真 だなと思いまして、聞きたかったんです。
[護]
私は何かが秀でているわけではないと思っていて、良く言えば万能選手、悪く言えば取り柄が何もないんですね。母は小さい頃から神童って言われていて、小学生で大人のクオリティの絵が描けるくらいの人だったり、父はとても頭が良くて国から「日本の大学に行ってこい」って言われて奨学金とかで来ている人なので優れていますし。一番上の兄は、高校も大学も海外に奨学金で行って、今は外資系でバリバリ稼いで、マンションを買って車を買って子どもが居てというサクセスストーリーを歩んでいる天才なんです。二番目の兄は音楽をやっていて、その兄も中学生くらいから自分でバンドやったりしましたし。母のお母さん、おばあちゃんも社交
ダンスの先生をやっていたり、80歳なんですけど今でも大会に出たりしているような。
[黒田]
どんな一家なんですか(笑)。
[護]
みんなすごいです(笑)。お父さんとお母さんは美形なんですよ。私は普通なんですけど、二人は整っているなって思うんです。ですので、いろいろ コンプレックス があって…、引きこもりになったのも唯一、私だけだったんですよ。アニメとかゲームが好きで。でもなんとなく許してくれていて、「幸せに生きればいんじゃない?」みたいな感じでした。
[黒田]
そういうコンプレックスを聞いていると、言葉を選びますけれども。
いい意味で比べる相手が高いところにいるというか、自分と誰かを比べた時に、下を見て自分を安心させる人もいるわけじゃないですか。そういうことをしない強さがあるんじゃないですか?ストイックというか。
[護]
大変なんですよ。出せない時とかあります。自分の基準に達していない宿題とかが出せないんですよ。わかりますか?
[黒田]
わかります(笑)。
[護]
最初は 写真もSNSにあげる のがとても 怖かった です。別に誰も評価していないし、期待もしていないんですけど、自分がお世話になった人たちのビジョンがあるんですよ。その人たちに並びたいとかではないんですけど、何かやろうと思った時に、自分の何が使えるかを考えた時に、育ってきた環境と、絵コンテが描けること、メイクが好きなこと、これも絵と共通していますが人にメイクができること、ファッションが好きなこと。あとは、何が他の方と違うかって言うと、自分が撮られていたことがあるので、撮られる側の気持ちがわかることですね。
「これ苦しいんだよね、ごめんね」 という。
[黒田]
それは大きいですよ。
[護]
大きいですね。ですので、基本的に修正はしていないものを載せているんですけど、「不細工に写ったらごめん」みたいな感じです。
でも周りにいる誰よりも、きれいだと思って撮っているんです。あとグラビアって、基本的に全部、用意されているんですね。常にカメラマンと自分が主役という現場なので、映画とか現場みたいに待ったり、誰かを優先させたりすることがなくて、メイクとかも含めて全て用意してくれているんですよ。あとは心一つだけで行くので、その環境ってとても心地よく仕事をさせてもらえる現場だなと思います。ですので、写真を撮る時はなるべく衣装もメイクも全て持って行きます。大変なんですけど、モデルが何も持っていなくて来るほうがやりやすいと思います。
[黒田]
全部ディレクションして、もう終わりまで後は流れに任せてみたいな感じですね。
[護]
「ご飯も全部用意するからね」という感じです。
[黒田]
そういうケアというか、気の利かせ方とかって、写真に影響してきたりもするじゃないですか。そういうところも効いていると思うんですよね。
[護]
友達を撮っていることが多いので、仲良くなり過ぎちゃうと、表情を作ったりするのが恥ずかしくないですか?
[黒田]
頼むのも恥ずかしいし、逆に壁がありますよね。
[護]
そうですよね。でも、すっぴんで来てもらって、「これ着てもらおう」って着替えてもらって、「メイク始めるね」って言ってメイクしていくと、こっちが 本気で撮りたい んだというのが 伝わる ので、相手もいい意味で仕事として緊張感をもって向き合ってくれるんですよね。ですけど、そこには他の人よりもちょっとした親しさがあって、1歩踏み込めることがあるので、それが面白いですね。
[黒田]
距離感をうまくコントロールしていますね。
[護]
やっぱり写真を撮られ慣れてない人もいるので、その場合はとにかく最初に遊びます。普通に遊んで、撮って、うまくない写真を量産して、現像して、癖を調べ、利き顔を調べ、という感じです。
[黒田]
つまり二回、撮るということですか?
[護]
一回は遊びで撮る みたいな感じです。
[黒田]
熱量がすごいですね。やり方に性格が出てる(笑)
[護]
できないくせに、完璧主義者なんです(笑)。
[黒田]
性格が似ているというか、共感できる部分が大きいので、言っていることはわかりますね。ただ自分は全く異なるアプローチを撮っているんですけど。
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2024年10月25日 発行
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