2017年5月25日
「写真と生きる」連載三回目にあたる今回は、プロフォトグラファー別所隆弘氏のインタビュー。
別所氏の作品を紹介しつつ、写真の魅力について語ってもらった。
カメラを購入してから本格的に写真を始めるまでの話を聞かせてもらえますか?
カメラを始めるきっかけは簡単なものである場合が多いように思います。私が初めてカメラを買ったのも、何気ない友人からの自慢話が最初のきっかけでした。自分も触ってみたいと思ったんでしょうね。
ただ、最初に買った入門用のカメラではそこまで写真にはまることはなかったです。それが一変したのは、NikonのD800というカメラを買った時のことでした。D800で撮った写真には、そこに世界がそのまま切り取られているようなすごい描写力が備わっていました。そのような写真をもっともっと撮ってみたいと思ったとき、私の本格的な撮影が始まったように思います。
写真に熱中するようになった経緯を教えてください。
元々の仕事は大学の教員で、専門は文学研究でした。プロのフォトグラファーになった今でも続けています。特に私の研究は文学の中でも極めてニッチな「表象研究」というもので、「見えるものがなぜそう表現されるのか」を研究する学問でした。多分このあたりが、「見えるものを見える化する」カメラ、あるいは写真という芸術を始める動機とつながっていたのかもしれません。
ただ一つ、文学と写真の大きく違う点は、最新の機種が次々に作られるカメラと違って、文学研究というのがとても古いジャンルだと言うことです。何もかもが古く、遅く、自分のやっていることがどうやって社会につながるのか、ずっと悩みを持っていました。そうした時に目の前に現れたのがカメラだったのです。
一つの作品を読むのに最低でも数時間、悪くすれば数ヶ月かかる文学とは違って、写真は驚くほど「瞬間的」でした。そしてその瞬間に凝縮されている強力なエネルギーに次第にひかれていくうちに、いつのまにか仕事にまでなっていました。
写真を撮るようになって、生活はどのように変わりましたか?
随分朝早く起きるようになりました 笑
いやこれは冗談ではないんです。朝早く起きると、自分の生きている世界が驚くほどに美しい場所なんだということに気づきます。写真家は常に写真の構図でこの世界を見ます。光の方向、影の濃さ、色、形。そうしたものを美しく感じられるように目が訓練されていきます。そういう目を持つと、これまで気づかなかったような場所に美しさが溢れていることに気が付くようになりました。
いまはプロフォトグラファーとしてもご活躍中ですが、写真を趣味から仕事になったきっかけは?
一つ大きなきっかけがありました。2年前、滋賀県長浜市から依頼を受けて、一年をかけて琵琶湖北側地域の風景を撮影いたしました。その写真が思いのほか好評で、私の撮影した余呉湖の写真で、観光客が大きく増えたという経験をいたしました。
作品>>「世界よ、これが日本のウユニだ」美しすぎる余呉湖の絶景
その時、写真の持っている「瞬間の力」を改めて感じたのです。自分の足が止まるならば、人の足も止められる。そしてその止まった足が、例えば収入に苦しんでいる地方の活性に少しでも役立つかもしれない。そんなことを考えました。写真を通じて、少しでも自分の生まれ育った土地の役に立ちたい、そう言う風に思い始めたとき、多分私の「仕事としての写真」が始まったのだと思います。
お仕事で撮影されている写真について詳しくお伺いできますか?
今年の主な仕事として、関西電力様のInstagramやホームページで使用される写真を撮っておりますが、それ以外にも幾つかの企業様から直接お声掛け頂いて仕事をするという形が多いです。
何か特定の依頼をこなすという形での写真撮影ではなく、私の作品性を気に入って、半年や一年と言った長いスパンで各企業様にご採用頂けておりますので、使われている写真は私の作品写真と何も変わらない写真を提供させて頂いております。SNSで拡散した写真を見たのをきっかけに、各企業の広報担当者様や代理店の方からご連絡をいただくという形での依頼が多いです。
別所氏にとっての写真とはなんでしょうか?
私にとっての写真とは「自由な遊び場」の感覚が強いです。広い広い場所で、各フォトグラファーが自分の想いを十分に再現出来うる場所、それが写真の世界だと思っています。
「古く」て「遅い」文学研究の世界にいたからこそ、その広さは本当に衝撃的でした。
だからこそ、大量に情報が流れてくる現代社会で、たった一枚の写真が、人の足を0.5秒で止めるのだと思っています。それは写真を理解するのにそれだけの時間しか必要がないからです。動画なら数分、映画なら数時間、文学ならば数日かかるような「人をひきつけるために必要な時間」が、写真なら0.5秒。こんな圧倒的なポテンシャルを有した媒体である理由は、そこが「自由を許された場所」であるからだと思っています。
別所隆弘
滋賀県在住。プロフォトグラファー。アメリカ文学研究者。国内外の写真賞多数受賞。主要な業績として、関西電力のInstagramを始めとする各SNS用写真や滋賀県長浜市の観光写真を担当。雑誌掲載や著書の出版なども数多く予定されている。滋賀、京都を中心とした”Around The Lake”というテーマでの撮影がライフワーク。自然風景を中心に、飛行機、花火、都市、工場などの夜景写真を得意としている。
公式HP http://www.takahirobessho.com
公式twitter https://twitter.com/TakahiroBessho
公式instagram https://www.instagram.com/takahiro_bessho/?hl=ja
制作 出張写真撮影・デザイン制作 ヒーコ
http://xico.photo/
カバー写真 黒田 明臣
出演 別所隆弘
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2024年10月25日 発行
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