2021年5月27日
国際的な映画祭で数々の賞を受賞するなど、近年は海外でも高い評価を獲得する俳優の役所広司氏。役柄を選ばない演技力はまさに円熟の域にあるが、次作は累計発行部数386万部超の大ベストセラーとして名高い司馬遼太郎の長編時代小説を原作とした『峠 最後のサムライ』。主人公の河井継之助、越後長岡藩の家老を演じた想いやいかに。ご本人に詳しくお話を伺った。
|今回のご出演は、小泉堯史監督の作品であることも大きな理由とか。
映画「蜩ノ記」に続いてお声を掛けて頂き、また小泉組で仕事できるというのは幸せなことです。原作は長編ですし、2時間ほどにまとめるのは大変だったと思います。
|主人公の河井継之助を演じていかがでしたか?
新時代の息吹を見通しながら、武士として、侍としての生き方を選んだ姿に感銘を受けました。後世の日本人への想いをしっかりと受け止めなければと強く思いました。
|役作りの面では、何か特別に心がけたことはありましたか?
原作の上・中・下巻を改めて熟読しました。脚本に網羅できない要素も多いですから、背景情報まで頭に叩き込んで撮影に臨みました。
|個人的に継之助に共感する部分は?
決断力と行動力ですね。正しく、美しく生きることを貫くには、どんな行動を取ればよいのか。今回は特別な場所も撮影に使わせていただきましたので、司馬遼太郎さんの美意識も含めて、幕末武士のエネルギーを感じることができました。
|改めまして、作品を楽しみにしている方々へのメッセージを。
侍たちの生き様は、それ自体が精神性や芸術性を内包するひとつの作品のように感じます。現代人に置き換えれば、私たちの仕事もすべて「誰かを助けること」につながっていますよね。彼らの哲学は日本人の心に生き続ける財産でもありますので、今回の映画が改めて「気づき」のきっかけになれば嬉しいですね。
|今年は他の作品も動き出してきたみたいですね。
凍結状態だったプロジェクトもいろいろと動き出しています。でも、再び延期を余儀なくされたものもありますので、この状況が続くのであれば「どう共存していくのか」について知恵を絞りながら動かしていかなければなりませんね。
|今月号のビズスタはまさにその「動く」がテーマです。では最後に、役所さんにとって「動く」とは?
やはり人との交流ですかね。演じる役柄の心の機微を表現するには、登場人物たちとのふれあいが欠かせませんからね。今は厳重に注意しながらの演技ですので、以前の日々に戻れることが待ち遠しいです。刺激を与え合って物語を動かすエネルギーを得るのが役者ですし、それは人間本来の姿でもありますから。
慶応3年(1867年)、大政奉還。260年余りに及んだ徳川幕府は終焉を迎え、諸藩は東軍と西軍に二分していく。慶応4年、鳥羽・伏見の戦いを皮切りに戊辰戦争が勃発した。越後の小藩、長岡藩の家老・河井継之助は、東軍・西軍いずれにも属さない、武装中立を目指す。戦うことが当たり前となっていた武士の時代、民の暮らしを守るために、戦争を避けようとしたのだ。だが、和平を願って臨んだ談判は決裂。継之助は徳川譜代の大名として義を貫き、西軍と砲火を交えるという決断を下す。妻を愛し、国を想い、戦の無い世を願った継之助の、最後の戦いが始まった……。
出演:役所広司
松たか子 香川京子 田中泯 永山絢斗 / 芳根京子 坂東龍汰 榎木孝明 渡辺大 AKIRA
東出昌大 佐々木蔵之介 井川比佐志 山本學 吉岡秀隆 / 仲代達矢
監督・脚本:小泉堯史 音楽:加古隆
エンディング曲:「何処へ」石川さゆり(テイチクエンタテインメント)
原作:司馬遼太郎 『峠』新潮文庫刊 配給:松竹、アスミック・エース
公式HP:http://touge-movie.com ©2020『峠 最後のサムライ』製作委員会
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2024年10月25日 発行
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