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十一代目市川海老蔵から、2022年歌舞伎座で十三代目市川團十郎白猿を襲名。七月大歌舞伎の見どころ、そして父から預かった大切な教えについて語る

十一代目市川海老蔵から、2022年歌舞伎座で十三代目市川團十郎白猿を襲名。七月大歌舞伎の見どころ、そして父から預かった大切な教えについて語る

2023年6月29日

十一代目市川海老蔵から、2022年歌舞伎座で十三代目市川團十郎白猿を襲名。今後も2024年10月まで各地を巡る襲名披露興行が続き、多忙な日々を送る團十郎さんは、この週明けから始まる歌舞伎座「七月大歌舞伎」にも出演する。

今年、2013年の新開場から十周年を迎える歌舞伎座。7月3日(月)から28日(金)まで行われる七月公演で、團十郎さんは夜の部の2演目に出演する。歌舞伎界の大名跡を襲名し、いま新境地へ。新たな道を歩み続ける團十郎さんに、今月のテーマ「一生モノ」の話題とともに七月公演の見どころなどをうかがった。

|間もなく始まる「七月大歌舞伎」では、夜の部の2演目に出演されます。まずは『め組の喧嘩』について、見どころをお聞かせください。

『め組の喧嘩』では、鳶頭の辰五郎役を演じます。「火事と喧嘩は江戸の華」を体現する世話物ですが、単なる喧嘩ではありません。喧嘩の発端となる場面ではグッと我慢して何とか収めようとしているのですが、やがて収まらなくなる。このあたりの葛藤は、子どもの頃から「カッコいいなあ」と思っていました。

|憧れの男、ですね。

そうですね。互いに引けない男たちと、仲裁する立場の人々という江戸の喧嘩の立ち位置とマナー、江戸っ子たちの生き方に触れることができる演目です。今は純粋に喧嘩を描く演劇はあまり見かけませんので、新鮮にご覧いただけると思います。

|もうひとつご出演の演目『鎌倉八幡宮静の法楽舞』は、平成30年の新橋演舞場で復活させた舞台ですよね。

はい。新たな着想で復活上演した作品ですが、今回は九世市川團十郎歿後百二十年として上演いたします。私は老女や化生など7役を、長女のぼたんと長男の新之助はそれぞれ3役を踊り分けます。今回は、特に私と子どもたち2人が絡むシーンで、台詞でもお客様に楽しんでいただけるような趣向を考えています。

|それは楽しみです。前回は5種類の音楽が使用されましたが、今回は?

今回も河東節、常磐津、清元、竹本、長唄囃子の5重奏をお楽しみいただけます。日本の音楽の違いや豊かさを味わっていただきたいです。

|今月号は「一生モノを手に入れる」というテーマなのですが、何か印象的な一生モノはありますか。

父(十二世市川團十郎)からの教えですね。父が生涯をかけて私に渡してくれたものを、今度は私が子どもたちに渡すことになります。形はありませんが、運命として預かった大きな荷物を渡す作業に取り組んでいるところです。

|このコロナ禍は、俳優の方々にも大きな変化をもたらしましたが、團十郎さんはいかがでしたか。

自分と向き合う時間が増えて、自分の心が豊かであってこそ、仕事がさらに充実することに改めて気付きました。では、自分が豊かになるためには何が必要なのかと言えば、周囲にいる人々の豊かさであり、笑顔なんですね。先ほどの「一生モノ」にもつながりますが、家族と共有する時間の大切さを考えると、今日、私が何気なく話すことが、子どもたちにとっての一生モノとなる可能性もありますので、伝えるべきことをしっかり伝えていこうと思っています。

|最後に読者へのメッセージをお願いします。

目まぐるしく変化する時代の中でも、歌舞伎は日本ならではの時間の刻み方、言葉では表現しがたい懐かしさを体感する時間をお過ごしいただけるのではないかと思います。『め組の喧嘩』では、一致団結して戦う高揚感を、『鎌倉八幡宮静の法楽舞』では、ひとりの俳優が様々な役を演じる歌舞伎のエンターテインメント性を存分にお楽しみいただけますので、ぜひ足をお運びください。

歌舞伎座新開場十周年 七月大歌舞伎
2023年7月3日(月)〜28日(金) 夜の部 午後4時〜
特集2306_サブ
>>公演詳細はこちらから

 


 

十三代目市川團十郎白猿さん

昭和52年12月6日生まれ。十二代目市川團十郎の長男。昭和58年5月歌舞伎座『源氏物語』の春宮で初お目見得。昭和60年5月歌舞伎座『外郎売』の貴甘坊で七代目市川新之助を名乗り初舞台。平成16年5月歌舞伎座『暫』の鎌倉権五郎ほかで十一代目市川海老蔵を襲名。同年10月パリ国立シャイヨー宮劇場で襲名披露。令和4年11・12月歌舞伎座『勧進帳』ほかで十三代目市川團十郎白猿を襲名。

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