Special Issueビズスタ特集

魅する輝き

魅する輝き

2016年1月30日 PR

今や「ボタン」を押す必要すらなく、タッチパネルに触れたら後はおまかせ。メンテナンスを行わなくても、機械はいつも機嫌よく動いてくれる。何とも便利になったものだが、一方では味気なくもある。そんな世の中で、「昔かたぎ」を守り続けてきた製品もあるにはあった。たとえばピュアオーディオがそのひとつだが、Mp3の登場で、完全に「円盤」レスの時代が定着。もう「スマート化」に抗う分野はなくなったのか…と思ったら、灯台下暗し、自分の手首にあった。機械式腕時計だ。
 

なぜ「ハマる」? 機械式腕時計

 
クォーツ式、デジタル式、ソーラー式、電波式、そしてウェアラブル端末。時計は機械化・電子化・スマート化の代表的な存在なのだが、その一方で、古きよき機械式が別系統のように進化し続けている奇妙な製品分野でもある。
機械式時計とは、「ぜんまい」を動力源とする時計のことだ。「りゅうず」と呼ばれるつまみを手動で回すか、腕に付けて振った時に巻き上げられたぜんまいが解ける時の力で駆動する。
時計の種類が数多く存在する中、常に新作が発表され、有名ブランドなら高額モデルも飛ぶように売れるのは、なぜなのか。その理由は、一度購入して、腕に付ける生活を試してみれば分かる。精密な機械は、ひとことで言って、そこが見えないほど広大なロマンの空間なのだ。

自分がとった行動に対し、期待したレスポンスを得ると、私たちは満足を覚える。自分の手で巻くと動き出すその姿には、自然と愛着を覚えるものだ。それが生活習慣となれば、もう離れられなくなる。「巻けば動く」。当たり前のことのように感じるが、よく考えてみよう。「ムーブメント」と呼ばれる動力機構部に収まった数百点にも及ぶ部品の大半は、目に見えるか見えないか…というレベルのサイズなのだ。そんな部品たちが力を合わせて、文字通り「一寸の狂いもなく」動く、魔法かお伽話のような小宇宙。というわけで、特にメカが好きでなくても、大の大人が「ハマる」理由は十分にあるのだ。
 

スマート化とは別方向の進化が楽しい

 
細かな作業を得意とする日本だけに、もちろん名ブランドは存在する。中でも、最近、存在感を増しているのが「オリエント時計」だ。1950年創業の老舗で、過去に大ヒット製品を多数輩出している名門なのだが、日本国内の「メイド・イン・ジャパン」人気で、再び脚光を浴びている。
いま同社の機械式時計に注目するなら、看板である「オリエントスター」シリーズから先ごろ発表されたばかりの最新コレクション「アーバンスタンダード チタニウム」がおすすめだ。ケース及びバンドにチタンを導入したモデルだが、その重厚なルックスにも関わらず、とにかく軽い。これは、長年にわたる時計づくりの技術のたまもので、機械式時計の重さが苦手という層からも喝采を浴びている。サファイアガラスには特殊なコーティングが施されており、光の反射を99%!抑えているという。さらに、ガラス表面には防汚膜も確保。撥水性が高く、汚れも付きにくく、しかも優れた視認性を保つという離れ業を実現している。ケースとバンドには傷に強い表面硬化処理まで施され、耐久性も大幅に向上しているので、ビジネスパーソンの普段使いとしては申し分のない仕様となっている。
というように、スマート化とは別の方向に進化し続けている機械式時計。これはなかなか面白い…というわけで、今月は日本のウォッチづくりを支え続けるオリエント時計の取り組みをご紹介したい。
 

創業から65年、揺らぎも変わりもしないもの。

 
ゆっくりと、慌てずに。着実に、生真面目に、でも萎縮せず。日本のモノづくりをそのまま体現する腕時計ブランドの歴史と現在。
「オリエント時計」は、1950年創業。昨年、創業65周年を迎えた老舗だ。同社のモノづくりの歴史を紹介するにあたり、入社から約40年にわたって機械式時計の製造・販売に携わってきた販売推進部の矢口洋氏に詳しい話を伺った。
 

何でも自由に挑戦できる

 
重厚で王道的な薫りが漂う製品が多い印象のオリエント時計だが、ウォッチファンの間では「常にチャレンジングな時計づくりを推進してきたメーカー」として認知されている。これは、創業年の関係から、国産時計ブランドの「三男坊」的なポジションに収まったことが背景にあるようだ。「昔から、何でも思い切って挑戦しようという社風がありましたね。業界初となるような試みが好きで、楽しみながらトライしてきた気がします」と矢口氏。同社のこれまでの歴史を振り返ると、氏の言葉の通り、ウォッチ史に刻むべき革新的な製品や技術で彩られている。
たとえば、ムーブメント石数世界一を目指した100石高級時計「オリエントグランプリ100」や、発売当時で世界一の薄さを誇った自動巻の「オリエントファイネス」は、腕時計マニアなら誰もが知る超有名モデルだ。また、水深100m前後までが一般的だったダイバーズウォッチの限界を一気に約1000mにまで引き上げたのも、オリエント時計の功績。このように、「世界一になるんだ」という技術者たちの決意が伝わってくるような製品が非常に多い。
その一方で、遊び心の発露にも寛容だったようだ。文字盤と言えば白やベージュがほとんどだった時代に、目にも鮮やかなカラーで仕上げた「ジャガーフォーカス」は、発売と同時に爆発的なヒット商品となった。さらに、腕時計の世界ではお馴染みの「9面カットガラス」※1も、同社がいち早く採用したものだ。大きく目立つわけではないが、後の業界のスタンダードとなるような発想や技術を次々と製品化にこぎ着けてきた事実は、特筆に値するだろう。
 

大ヒット商品と、それよりも大切なこと

 
社史を眺めていると、ひとつ、驚くことがある。創業の翌年に、現在まで続く同社の「顔」が誕生していることだ。
1951年にリリースされた「オリエントスター」は、ウォッチ市場における同社の地位を決定づけた名モデルだ。モデルチェンジのたびに改良が重ねられてきたが、中でも1971年に誕生した独自開発の「46(ヨンロク)系ムーブメント」はその代表格と言える。ムーブメントとは、平たく言えば時計内部の動力機構のことだ。この中には、時計の精度を司る「てんぷ」というパーツがあるが、この動作(振動数)を劇的に改良したのが46(ヨンロク)系だ。その威力はすさまじく、この実績からも分かる通り、「メイド・イン・ジャパン」の歴史の一角に名を連ねるべきエポックだったと言えよう。パワーリザーブ機能やワールドタイム機能、GMT機能など、時代に即したブラッシュアップを施しながら、製造開始から40年を経過。単一のキャリバー(固有の型番)でここまでのロングライフを達成したものは世界的にも極めて珍しく、文字通り「超」がつく長寿製品となっている。

矢口氏によれば、「時計としての心臓部は変えていない」ので、たとえ40年前に購入した時計でも、メンテナンスや修理が可能なのだそうだ。これだけのヒット商品であれば、その名を借りてさまざまな商品企画やプロモーション展開もできたはず。それよりも、職人としての誇りと時計への愛情を優先してきたオリエント時計。ただただ、頭が下がる思いだ。
 

秋田県で守り継がれる職人の仕事

 
いまでこそ「メイド・イン・ジャパン」を強調する傾向にある世の中だが、それはもともと、モノづくりへの誇りを大切にしてきた職人たちが積み上げてきた実績と信頼によるものだ。私たちは、地道な仕事を世界的な名声へと育て上げてきた彼らに対し、改めて敬意を示す必要があるだろう。
オリエント時計は、こうした先人の一人ということになる。前述した不変の代表モデル「オリエントスター」は、同社の関連会社である秋田県内の製造工場「UTS」で生産されている。矢口氏によれば、空気が澄んだ同地の環境は、時計づくりに非常に適しているのだそうだ。職業柄か、土地柄もあるのか、工場内は生真面目な職人気質のスタッフが多いとか。機械式時計は、一般的なクォーツ時計の倍以上もの部品点数があり、手作業が必要な工程も多い。また、出荷前には技能者による綿密な検査も必要だ。矢口氏の説明では、ダイヤルのアップダウンなど、5方向から精度をチェックするのだとか。これは、使用者の職業や習慣によって、よく取る姿勢が違うことに配慮するもので、機械的なチェックとはひと味違う。このデジタル時代でも、人間の感覚という超アナログな要素を捨てない点も、オリエント時計に集まる信頼の源となっているのだ。
 

本紙推薦、2つのスケルトンモデル

 
時代とともに少しずつ変化してきたオリエントスターは、「コンテンポラリースタンダード」と「クラシック」の2つのラインから構成されている。いずれも人気が高いが、最近特に目立っているのが、「オリエントスター モダンスケルトン」だ。従来のセミスケルトンモデルよりもシースルー部分を大きく取り、機械式時計ならではのダイヤルデザインを強調。ケースデザインは、ラグの斜面を鋭角に切り落とし、さらにエッジを効かせている。ムーブメントの微細な動きが見えるメカニカルなフェイスだが、さりげない重厚感と上品さ、優雅さを忘れていないのが、オリエントスターの特徴。バンドのデザインはベーシックなテイストに仕上げられているので、スーツの袖元にもよく似合うはずだ。

こうしたスケルトンタイプは、近年、人気が再燃しているとのこと。そこで、「クラシック」シリーズでも、初となるセミスケルトンモデルがリリースされた。「オリエントスター クラシックセミスケルトン」は、球面ガラスからケースにかけての丸みを持たせた形状が特徴的。前述のモダンスケルトンがクールさを強調したモデルだとすれば、こちらは機械式時計ならではの温かみを感じさせるデザインと言えよう。膨らみ感が楽しいボンベダイヤルの裏では、シンプルなパワーリザーブが機能。セミスケルトンは9時の位置に配置されており、機械式ムーブメントの魅力を日常的に実感することができる。

オリエント時計は、価格帯の幅広さも人気の理由のひとつ。手に取りやすいモデルも多数揃っているので、機械式時計の入門層にもおすすめのブランドだ。歴史、職人仕事、そして現行モデル。ざっくりと俯瞰したが、基礎知識はこれで十分。まずは店頭で、目に付いた1本を手に取って欲しい。その日から、あなたの「時間」が変わるはずだ。

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