Special Issueビズスタ特集

継承と開拓を同時に行う情熱が、「日本」を創る。

継承と開拓を同時に行う情熱が、「日本」を創る。

2016年12月15日

インターネットの発達により、海外からの発信情報で自国の魅力に気づく機会が増えた昨今。伝統芸能はその典型だが、中でも天保の改革の弾圧による退潮など、幾多の危機を乗り越えた歌舞伎は、若手の台頭もあって活気に満ちている。

期待の若手の筆頭株と目されるご存じ尾上松也さんは、現在BS11の『尾上松也の古地図で謎解き!にっぽん探究』(毎週水曜20:00〜20:54)に出演中。今をときめく歌舞伎俳優ですら「新鮮な発見の連続」と驚くほど奥が深い日本の魅力。活躍舞台である歌舞伎、そしてご自身の近況ともども、お話を伺った。

| 約400年もの歴史を持ち、無形文化遺産にも登録されている歌舞伎ですが、役者さんの側から見た魅力は?

物語や演出法などいろいろありますが、僕個人としては、ひとことで言えば「パワー」でしょうか。どんなにハチャメチャなお話でも成立させることができるほどパワフルですからね。実は厳格な定義もないので、音楽で言うとロックに近いんじゃないかな。

| 傾奇者というくらいで、割と自由なんですね。

もともと歌舞伎は庶民を相手に自然発生した文化ですしね。一方で、先人の魂、生き様のようなものを反映してきたわけで。今はエンタメが花盛りですが、深い精神性を持つ点も魅力ですね。

| 今、かなり多方面でご活躍のようにお見受けしますが、意図的にフィールドを広げておられるのですか?

歌舞伎の内外での個人的なキャリアづくりだけでなく、歌舞伎自体の認知度を上げていくことも使命ですからね。自分に何ができるのか、どこまで通用するのかを学ぶと同時に、客層を広げて歌舞伎に恩返しを、と思っています。

| BS11の古地図の番組が好評ですね。芸の道にも役立ちそうな内容で。

そうなんですよ(笑)。古地図をもとに調べると、歴史上の人物のイメージがガラリと変わったりね。たとえば、歌舞伎に「仮名手本忠臣蔵」という演目がありますが、吉良上野介は本当にそこまで意地悪していたのか…とか。役者の目で見ても、新鮮な発見だらけで、毎回面白いですよ。

| 日本の魅力を再発見という感じでしょうか。

ええ、番組を通じて勉強させていただいています。たとえば、日本人は黙々と忠義を尽くすことを美と感じますよね。歌舞伎にも「型」があって、「語らずして察せ」という部分が多いんです。日常生活に置き換えると、海外の方々なら「もっと自己主張すればいいのに」と思われるのでしょうが、そんな彼らでも侍に憧れたりするのですから、やはり「日本らしさ」ですよね。

| 期待も大きくてプレッシャーもお感じかと思いますが、歌舞伎俳優として特に大切に考えておられることは?

芸とともに魂を繋いでくださった先輩方は、常に工夫を重ねてこられたんですよね。古典を受け継ぎながら新作にチャレンジする姿勢は、歌舞伎という文化自体を継いでいく上でも極めて重要な要素なんです。継承と開拓を同時に行う情熱が日本独特の演劇文化を守ってきたわけですから、僕らも後に続かないと。

| 最近では歌舞伎自主公演で新作にもチャレンジしておられますが、今後の夢などは?

歌舞伎にたくさんある古典作品も、初めて上演された時はすべてが「新作」だったわけですから、きっと当時の方々も僕たちと同じ気持ちをお持ちだったと思うんです。僕たちの世代でも、後輩たちが「受け継いでいきたい」と思ってくれる作品をひとつでもつくってみたいですね。

| 世界からも注目を浴びる歌舞伎ですが、これから劇場デビューする入門者の方々にアドバイスはありますか?

興味がおありなら、まずは若手公演がおすすめですよ。料金が安めで、比較的分かりやすい新作の演目も多いですから。面白いと感じたら、大歌舞伎で古典をご覧いただきたいですね。この年明けからは浅草公会堂で「新春浅草歌舞伎」も開幕しますので、よろしければ、ぜひ。

●新春浅草歌舞伎(浅草公会堂)

平成29年1月2日(月)~26日(木)

《ナビダイヤル》0570-000-489/TEL.03-6745-0888

観劇料:1等席9,000円 2等席6,000円 3等席3,000円


 

尾上 松也 さん
歌舞伎俳優。父は六代目尾上松助。1985年1月30日生まれ。5歳で「伽羅先代萩」の鶴千代役で初舞台。現在は「連獅子」、「寿曽我対面」曽我五郎、「仮名手本忠臣蔵五・六段目」早野勘平、「鳴神」鳴神上人、「弁天娘男女白浪」弁天小僧菊之助、「与話情浮名横櫛」切られ与三郎、「義経千本桜」佐藤忠信を演じるなど、将来を期待されている花形役者の一人。また、歌舞伎以外にもドラマやミュージカルなど多方面で活躍中。

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