2018年4月26日
今回は、日本最大級のストックフォト販売サービスを運営する株式会社アマナイメージズのクリエイティブディレクター / 取締役である松野正也氏と、ヒーコ黒田明臣氏による対談をお送りします。ストックフォトサービスとフォトグラファーの関係性や、アマナイメージズが掲げるビジョンなど、フォトグラファーとは異なる形で写真を見つめる対談をお楽しみください。
Index
● 1 松野正也×黒田明臣 対談「ビジュアルは伝える手段」
○ 1.1 アマナグループのサービスについて
■ 1.1.1 写真の価値
○ 1.2 ストックフォトに関して
■ 1.2.1 売れる写真
■ 1.2.2 ビジョンを持つ
○ 1.3 「ForYourImages」と「amanaimages.com」の違い
■ 1.3.1 写真と承認欲求
○ 1.4 人の目に触れる
■ 1.4.1 アートトレインプロジェクトについて
● 2 松野正也×平井義浩×黒田明臣 対談「ビジュアルのアマナをかたち造るもの」
○ 2.1 フォトグラファーのクリエイティビティを高めたい
○ 2.2 写真とお金
○ 2.3 好きな事を仕事にする新しい形
○ 2.4 写真とアート
○ 2.5 ビジュアルへのこだわり
● 3 プロフィール
○ 3 .1 松野正也
○ 3 .2 平井義浩
○ 3 .3 クレジット
■ 3 .3.1 参考
○ 3 .4 ForYourImages
○ 3 .5 amanaimages.com
○ 3 .6 株式会社 アマナ | amana inc.
[黒田]
本日はよろしくお願いいたします!アマナさんは、ビジュアルコミュニケーションカンパニーということでストックフォト主体の会社だと認識されている部分も大きいと思うんですけど、この間お話お伺いしたら、色々なサービスを展開されていますよね。今日はその全貌をお伺いしたいなと思ってまして(笑)
話したいことがたくさんあるのですけど、最初にストックフォトについて、お話しできればなと思っています。
[松野]
アマナグループは元々、広告撮影から始まっている会社で、ストックビジネスが母体というわけではないんです。もちろん「ストックフォトのアマナイメージズ」という認知は広く、それはそれで良いところでもあるんですけど、お客様のビジュアルのニーズに対して、どのようにソリューションしていくか、というところが中心です。
「桜の写真が欲しい」とお客様に依頼されたら、「今撮り下ろしできない、じゃあストックフォトを使おう」というスタイルなんですよね。そこが他社のストックフォトサービスとは違うアマナの強みであったりします。
[黒田]
まさにそれを感じます。ビジュアルコミュニケーションというのが、根幹にあってそのための手段としてストックフォトがあって、と考えるのがしっくりきます。
一般消費者にとっては掲載時のクレジットなどをはじめとして、アマナさんの名前はストックフォトとして知られることの方が多いでしょうから。実際に自分も昔、ストックフォトというビジネスモデルがあるんだということを知って、じゃあそれはどこなんだろうってなったらアマナさんが一番に出てくるので、そういうイメージがありました。当時写真をやっていなかった頃に、制作会社にいて写真を購入したりしたこともあります(笑)
しかしいまは色々知って、本当に何でもやられてるという印象です。しかも、前衛的と言ったらあれですけど、すごい前を走ってるイメージがあるんですよね。横綱相撲っていうよりは開拓精神みたいなところをすごい感じていて、そういうところがなんか本当にクリエイティブなんだなと思う部分でもあるんですけど。
[松野]
最近は一般消費者向けのイエローコーナーという額装されたアートフォト作品の販売事業や、IMAというアートフォト雑誌の出版事業も展開していますが、写真やイラスト、動画を始めとする「ビジュアル」というのは本来、広く 想いを伝える手段 の一つとしてもっと活用してほしいと思っています。
例えば、写真をギフトとして使っていただいてもいいですし、自分の部屋とかオフィスでもいいんですけど、主義や信念、メッセージなどを写真に置き換えて、生活の中に取り入れる。
そうするとおもしろいのは、空間に写真があるとそこに話題が生まれるっていうところなんですよ。ビジュアルを通してコミュニケーションを活性化していこうぜっていうのが、アマナの根本にあるんです。
[黒田]
本当に写真というか、ビジュアルイメージを媒体として使われてるというか、そういう思想なんですね。
[松野]
そうなんです。
写真の価値
[黒田]
なるほど。生活に密接してくるレイヤーの話というか、フォトグラファーやクリエイターに限らず、誰にでも当てはまるコンテンツを取り扱っていると。
[松野]
例えば、いまこの会議室に飾ってある光の写真ひとつとっても、一見ただキラキラしたイメージじゃないですか。でも実はこの写真の価値は、いつ誰がどういう背景で撮っているかとか、どういう理由でここに飾っているかとか、そういった側面が重要であって、そこに価値がある。そうして話題も生まれるんですよね。そこに我々は非常にこだわっています。
[黒田]
クリエイターにとっては、ありがたい存在ですね。フォトグラファーもそうですけど。ビジュアルを制作する側の人間としては、場を用意してもらってるというか、かつその中で動いていくための後押しもあるし、道も作ってくれてるわけですし、ものすごーくクリエイターに寄り添ってるイメージがあります。
[松野]
そうですね。まさにおっしゃるとおりです。
[黒田]
ただのストックフォトサービスでは終わらないというか、制作もアサインメントの方で活動されていますし、そういうサービスがありながらストックフォトも開始したというのは、単純に問題解決というか、写真が必要という需要に対してソリューションを提供したらめちゃくちゃ盛り上がっちゃったみたいな、そういう感じなんですかね(笑)
[松野]
もちろんそういう成功の背景はあったと思います。
[黒田]
なんだかものすごくありがたい気がしてきました。祈りささげるしかないレベルの(笑)
[松野]
それはそれですごいですね(笑)
[黒田]
ストックフォトに関して、今は趣味として写真を嗜む方も増えてますし、そういう方々でも始められるのかな?というのが素朴な疑問です。例えば自分がアマチュアだったときに、普通にストックフォトで写真を販売して生計を立てないまでも趣味の延長で楽しんでいく、写真を楽しんでいくという道もあったかなと思う部分があるんですよね。自分の周りにはあまりいないのですが、そういうフォトグラファーの方もやはりいらっしゃるんですか?
[松野]
そうですね。基本的には誰でもできるというか、そういうことになってます(笑)
細かいことを言うと、いま弊社には ForYourImages と amanaimages.com と二つのサイトがあって、 amanaimages.com の方は、プロのフォトグラファーやイラストレーターの作品を取り扱っているのですが、ForYourImages の方は基本的にはプロでなくても参加可能です。もちろん18歳未満は親の同意書が必要とか、ありますけど。
[黒田]
なるほど、逆に言うと年齢による規約をつくらなければならないほどに門戸は広いということですね(笑)
[松野]
誰でも参加はできると。
ただ、ストックフォトを購入するユーザーは、広告や出版、Webメディア等に使うことを目的として購入されるので、基本はそれらに使われることを意識した作品の方がよりサイトで活きてくるという傾向はあります。
[黒田]
それはつまり、趣味の延長として撮った写真をただ掲載してもらうだけでは、購入者の需要に対してダイレクトに響く作品じゃないと売れづらいってことですよね。
元々売れやすそうな写真が作品の人、たとえばテーブルフォトとかなら良いでしょうけど、広告などに使いづらいような写真は難しいと。
撮る側からしてみても、撮った写真が売れるっていうのが一番の成果だと思うんで、そういうポジティブな反応を得るためには、そういう媒体、その中で売れる写真を撮って出すっていうのが大事になってくるわけですよね。
[松野]
はい、そうなんです。
売れる写真
[黒田]
やっぱり単純に好きなものとって掲載してもらうだけだと、チャンスはあるかもしれないけど、そこで生計立てて食っていうのは難しいものなんですかね。
[松野]
本当に好きなもの、例えばアートフォトでももちろん色んな媒体があるので使い道はあるんですけど、売れ筋はやっぱり広告や販促物での使用です。ライバルも多いですし、検索結果の表示もどんどん埋もれていくと、あんまり見られなかったり使われなかったりする。その中でどうストックフォトに挑戦していくかという観点では、より 使用目的を意識した撮影 をし、預けていただくのが良いかなと。
[黒田]
ちょっとSNS的な要素と言うか、SNSもただ乗せるのではなく、インスタグラムとかでも戦略的にやってる人とかもいますし、そういうアプローチも必要になってくるっていうことですよね。ストックフォトで売れるための写真制作論というか。
[松野]
そうですね。ただ、SNSよりは、もうちょっと目指すべき方向は分かりやすいんじゃないかなと思ってるんですよね。SNSだと投稿している情報の価値が重要になってくると思いますが、ストックフォトは、あくまでイメージとしての写真が中心になってくるんです。つまり、 写真の表現力 が重要になってきます。もちろんドキュメンタリーの写真もあるんですけど、SNSとは違うモチベーションや意識が必要になってくるのかなと思っています。
[黒田]
たしかにストックでは見せるものが写真と決まってますし、用途もある程度想像できるので、趣味でやってる人がストックフォトで大成するというか、その中で自分のやりたいことやっていくのはSNSに比べると攻略しやすいというか。
[松野]
そうです。マーケティングしやすい。登録しているフォトグラファーの方でも、マーケティングの場というイメージを持てる方は強い。そう考えると撮りやすいんじゃないかな~って思ってます。
[黒田]
確かに。マーケティングの場としてというのはありますね。
いまストックフォトを知ってるフォトグラファーの方はいっぱいいると思うんですよ。ただ、そのサービスに自分がどう接していいのか分からない人もすごい多いと感じていて。そもそも購入された写真が広告として使用されるという認識を持ってない人が大多数いるのかなと思っています。
そういう人たちはちょっとしたアイデア一つで作品撮影の合間にそういう1枚を撮ってみるとか、普段旅行中でも何でも良いですけど、テーブルフォトでも、そういうちょっとした普段の撮影にスパイスを加えるだけで、意外とストックフォトに手を出すだけの素材は我々なんか日々撮ってるんで、あるんだろうなというのは感じますね。
構図一つとってもコピーが入ることを想像したり、撮影する作品についても鑑賞者にコンセプトを連想させたりイメージを抱かせたり、こういう取り組みはストック関係なしに写真の仕事や写真家としての姿勢みたいなところとも近い部分がありますよね。
ビジョンを持つ
[黒田]
自分が知る限りですが、 ForYourImages でも amanaimages.com の方でもそうなんですけど、登録されて、さらに成り上がっている方。言い方がちょっとアレですけど(笑) そこで活躍されてる方っていうのは戦略的にこの写真はこういうイメージだっていう ビジョン を持った上で撮られてる印象があります。
[松野]
めちゃくちゃ戦略的にやられています。もちろん我々もそこに対して「こういうキーワードが検索されてます」や「こういうものが売れてます」、「最近こういう広告表現が多いですよね、トライしてみてはどうでしょう?」という形で、情報を共有したりします。
それをヒントにしていただきながらも、プロのストックフォトグラファーは、分析というか、自分の預けた作品の中でABテストをされています。これがだめならこういう形でやってみようだとか、本当に戦略的。
ほかにも、撮影の中のバリエーションの組み方だったり、いち企画撮影の中で、何に使われることを想定し、何を、どのように、どれだけ撮っていくかということを全て系統立ててプランニングされています。なんとなく仕事やプライベートの撮影の合間にっていうよりは、本気でやってる人はちゃんとそのためにプランニングしている感じがしますね。
[黒田]
架空のクライアント を想定して、それに対して、いわゆるディレクション的なところも含めて、やられてるということですよね。
[松野]
そうですそうです(笑) 架空のクライアントっていうところなんですけど、例えば保険や教育教材、不動産、旅行とか、業種で考えると、そこに向けて何作るかみたいなことは、比較的想像しやすかったりするので。こういうイメージよくパンフレットに使われているな、だったらそれらの表現をちょっと自分流にアレンジして撮影してみよう、とか。
人気の「人物」イメージの検索結果
[黒田]
たしかに、一般消費者として日々広告は目に止まっているわけですもんね。
そう考えるとその試行錯誤は、取り組む面白さがありそうな気がします。
[松野]
はい、めちゃくちゃ面白いと思います。
[黒田]
さっきのマーケッティングの場として使って欲しいという話もそうですが、架空の仕事を想像してストックフォトをやっていて、実際に商業フォトグラファーとして、つまりプロとしてやっていきたいっていう人、特に広告写真をやりたいなんていう人にとっては宣材にもなると思うんですよ。
自分のブックに入れたりとか。少なからず自分なんかそういう仕事が多いので、種をまいておくじゃないですけど、宣材として撮りつつストックフォトでも展開するというやり方もありますよね。
[松野]
今はロイヤリティフリーが中心になっているので、なかなか使われた写真は見つけづらいんですけど、実際どう使われたかというのは、日々の生活の中で目に触れることもあるわけですよね。
自分の作品がWeb広告だったりとか、街中の交通広告で使われているのを偶然見つける、ということも全然あると思います。そうしたら「ああ、こうやって自分の写真が使われるんだ」といった感動することもあると思います。それがストックフォトの醍醐味だと思うんですけど。そういったことを通して世間に自分の作品が触れていくっていうところはすごいモチベーションになると思います。
[黒田]
なりますよね~。それは本当に、仕事でやっていてもフォトグラファー冥利に尽きるというか、できるだけ多くの方に見ていただける、一つの喜びというところもあると思うので。
さっきのお話にもあがってましたけど、直接フォトグラファーさんに今こういうのがはやってるよとか、こういう写真撮ってるのであれば、こういうのもついでに撮ってみたらどうですかみたいな、コミュニケーションはあるものなんですね。
[松野]
ForYourImages と amanaimages.com では少しフォトグラファーとの関わり方が違っていて、 ForYourImages の方はフォトコミュニティスタイルをベースに作られていて、フォトグラファー向けセミナーを開催したり、メルマガで情報発信したり。そういったコンタクトの仕方をしています。
amanaimages.com の方もセミナーやメールでの情報発信等はしていますが、作家さん個別にお会いしてコミュニケーションを取ることが多いです。
[黒田]
ForYourImages の方がプラットフォーム的要素であったりとか、メディア要素があって、 amanaimages.com の方はマネジメントに近いような感じですかね。
[松野]
そうですね、実際マネジメントではありませんが、作家さんのお力をお借りしてブランディングしているところでは、それに近いかもしれません。もちろん、全ての作家さんにお会いすることはマンパワー的に難しいですが。
[黒田]
例えばとっかかりって ForYourImages の方で参加をする感覚で写真を出していってっていうところだと思うんですけど、その先に amanaimages.com があるわけじゃないですか。
[松野]
そうですね。先というか別のチャネルですね。
[黒田]
そこのチャネルを行き来されてる方とかはいらっしゃるんですか。
[松野]
もちろん。いらっしゃいます。二つに作品を提供していただいている作家さんも多いですね。
[黒田]
そこの切り分けが普通に考えちゃうとヒエラルキーに近いものに感じられそうな側面もあると思うんですけど、そうではなく、チャネルが違うっていう感覚なんですよね?
[松野]
チャネルだけですね、基本的には。クオリティに違いがあるっていうのは全く無くて、売り方やターゲットが違うだけなんです。あと先程お話ししたコミュニティの性質が違うという側面もあります。
[黒田]
そう考えると、良い切り分けですね。参加されている作家さんは何名くらいいるんですか?聞いてよいのかわかりませんが(笑)
[松野]
作家数で言うと大体1万人なんですよ。実質アクティブに活動されている方は500~2,000とか、そういうレンジです。
[黒田]
パレートの法則じゃないですけど、一部の2割くらいが全てをまかなってるというか、それはそうですよね。
[松野]
考え方でいうと、 ForYourImages の作家さん、 amanaimages.com の作家さんで切り分けているわけではなく、株式会社アマナイメージズとお付き合いさせていただいている作家さん全部みたいなイメージを持っていて、それぞれどこのチャネルで流通させるのが最適なのか、一緒に選んでいく感覚です。
[黒田]
道というか、販路じゃないですけど、チャネルが違うだけ。
[松野]
その人それぞれにとってどちらが適切かという違いです。
[黒田]
そうですよね。それは作風にもよるでしょうし、制作ベースであったりとか。確かに。
[松野]
あとは使われ方の違いがあります。 ForYourImages の作品使用用途はWeb系のメディアや広告が多かったりするんですけど、 amanaimages.com はキャンペーンや企業広告、書籍やカレンダー等、印刷物系媒体が多かったりします。
[黒田]
確かにそこって全然違いますもんね。買う側の意識が特に。写真というメディアに対する価値観というか。
[松野]
全然違いますね。
[黒田]
例えば、ウェブ用の写真となると、やはりいまでもインターネットは無料といった世の中の認識がありますよね。
ウェブメディア用に写真がちょっと欲しいという人たちと、会社のキービジュアルとして写真制作してもらいたいという人たち。これらはストックフォトがソリューションになり得ますけど、「無料で写真なんか手に入るよ」という温度感・リテラシーや、「広告やキービジュアル買います」という人たちへの橋渡し的な存在にもなっているのかなとは、お話を聞いていて思いました。
[松野]
おっしゃるとおりです。
写真と承認欲求
[黒田]
個人的にですが、自分はアマチュアで写真をなんとなく撮っていた人間なので、そういう人たちの気持ちとか、想いとかを考えたり、投影して考えたり、もしくは自分を振り返って考えることが結構あって。
いま世の中的に、ストックフォトをやって生計を立てて、「オレはこれで食っていくぞ!」という熱量の人よりも、承認欲求じゃないですけど、「自分が認められたい」「自分が作ったものを認めてほしい」といった、要はお金以上に、「この人たちに僕の写真は認めてもらえたんだ」という気持ちを、お金と同じか下手したらそれ以上に求めている人はすごく多いんじゃないかなって思っています。
例えばアマチュアで今やってる人たちのアプローチっていうと、コンテストに出してそれが入賞したっていうところで承認欲求を満たしたりとか、あとは雑誌とかの応募でも良いですし、SNSとかで言うと普通に載せていって褒められたり、どこかの会社から声がかかったりとかいうところに喜びを見出したり目指している方が多いので。
[松野]
単純にいいねの数とか。
[黒田]
そうですね~。それもありますし、写真展をやって人に来てもらえるといった喜びもそうですし。とにかく認められたいという意識をすごく感じます。
そしてそのアプローチとしてストックフォトをやろう!という認識が、あまりアマチュアのフォトグラファーにはないと思っていて。その承認欲求が行き先が、コンテストや写真展のようにストックフォトへと向くようなアプローチをしたら面白いんじゃないかなと思ったのですが、そういうアプローチはしているんですか?
[松野]
さきほどお話した ForYourImages は、元々フォトコミュニティの考え方がベースで作られてるというところもあって。基本はそこなんですよね。
例えば撮影をし続けるには、その次の制作費につなげる仕組みがないといけないわけですよね。そこには、クリエイティブに対してしっかり対価を支払いできる仕組みとして、活用していただきたい想いがありまして、それでForYourImages をストックフォト販売サイトっていう形式で運営をしている側面もあるんですね。
なので気軽にご自身のクリエイティブがそういうプラットフォームを活用して、どのように評価されるかっていうのを試していただきたいと思っています。
[黒田]
なるほど!まさに ForYourImages 自体が、そういう承認欲求を満たすというか、自分をプロモーションして、世の中に知ってもらうっていうメディアでもあり、プラットフォームでもあると。
[松野]
そうです。昔はFotologueというサービスもやっていました。
[黒田]
ありましたね~!(笑) アマナさんがやっていたのですか!
[松野]
はい(笑)
実はあれアマナでやってたんですよ。あそこは完全にフォトコミュニティで、写真の販売というのはやっていなかったです。
あの延長でもあるんです。実は。
[黒田]
そう考えると面白いですね。
[松野]
あとはクリエイター向けのセミナーなどをやっていますので、我々と一緒にクリエイティブのトレンドやテクニックを学んだり、フォトグラファー同士のコミュニケーションをとることもできます。その中でさらに上を目指していただくとか、そういったところに楽しみを見出してもらいたいですね。
[黒田]
マガジンみたいなのとか、コンテストもやられてますもんね。そういう考え方で色んな人が参加して、その中で自分の写真の発表の場としてやっていけたら結構面白いですね。
普通に載せるよりも、ギャラリーじゃないですけど、ポートフォリオ的な感じで載せてもいいでしょうし。
[松野]
あと見られる機会が全然増えると思うんですよね。
[黒田]
たしかに。しかもSNSとはまた違うユーザー層ですよね。新規開拓と言うか。マス向けという面もあると思いますけど、購入意識のある方が見るわけですもんね。趣味で写真をやっていてSNS活動に勤しむ人が勘違いしがちなポイントがあって、ツイッターでもインスタグラムでも、いいねの95%は普通の人じゃないですか。その中に、「この写真良いから採用しよう」とか「このフォトグラファー良いから仕事頼もう」という裁量を持っている人が見て良いなと思ったら仕事になる可能性も大きいと思いますけど、効率的には、そういう裁量のある方々がみているマーケットに作品を投げたほうが良いですよね。
ただ、どうしてもそういう発想ではなくいいねの数なんかに注力してしまう。いまは、インフルエンサーとして実力あるフォトグラファーを探す企業も増えているので裁量をもつ方が徘徊しているケースも大分増えてきてはいるかとは思いますが。
そういう意味では、ストックフォトをポートフォリオ代わりに使うのはそういうところに直結してるチャネルに写真放り込めることになりそうですね。
[松野]
おっしゃるとおり、まずは放り込むっていう感覚でやっていただいて、乱暴な言い方ですが、一回登録してしまえば野放しなんですよね。仮にその写真が広告的なポテンシャルを持っていれば、自分が知らない間にどんどん売れていってしまう。なんてことがあるかもしれません。
[黒田]
そう考えるとほんとおもしろいですね。
[松野]
人の目に触れるという話で言うと、色んな人に見られるテレビで写真が使われるということもありますが、最近だと東京メトロさんの電車内で展開したアートトレインプロジェクトという企画もあります。
地下鉄の車内の中に絵を飾るという企画なのですが、実際に ForYourImagesのクリエイターも参加されています。そういった形で色々な人に目に触れる機会が増えていくので、作品の可能性を広げるっていう意味でもどんどんチャレンジしてほしいなと思っています。
[黒田]
そうですよね。今のアートトレインプロジェクトの話もそうですけど、ストックフォトにかぎらず写真を楽しんでる方々に向けて色々なアプローチで、サービスを展開されていますよね。
IMAやイエローコーナーであったり。写真という共通項の中ではあると思うんですけど、とにかく幅広い印象です。個人的に単純に気になる疑問として、ストックフォトへの流入を狙った展開なのか、ビジュアルで世の中を良くしていこうじゃないですけど、というアプローチの中の一つにストックフォトがあるのかというのも気になりました。
アートトレインプロジェクトについて
[黒田]
アートトレインプロジェクトについて詳しくお聞きしたいですが、あれは、ForYourImages に投稿されている作家さんの写真を言葉に載せて、電車をジャックっていう言い方が正しいのか分からないですけど、広告として進められてるプロジェクトですよね。どういうきっかけで始められたんですか?
[松野]
元々は、メトロアドエージェンシーの方と宣伝会議の方とアマナの担当者でちょっとした雑談をしていて、その延長で生まれた企画なんです。メトロアドエージェンシーさんとしては、地下鉄の広告媒体の新しい使い方を提案したい。宣伝会議さんにはアーティストの方のネットワークがあり、アマナには沢山の写真がある。その三社で何かできないか、というところからスタートしたわけです。
最初はアーティストの方がアマナイメージズの写真をキュレーションする形でスタートしましたが、今年に入ってから、 ForYourImages のクリエイター二名が作品を提供していただくことになりました。
[黒田]
なるほど。奇跡に近いメンバーで行われた飲み会ですね(笑)。バッター、キャッチャー、ピッチャー全部揃ったみたいな。全員バッターじゃないと言うか(笑)
キュレーションをクリエイターの方がして、 ForYourImages からすると、キュレーションを受けるだけだったところがアプローチもできるようになる良い循環が生まれている気がしました。面白いですよね。先ほどの承認欲求の話で言ったら、結構見てもらう究極のところにあると思うんですよ。この企画。
[松野]
だいぶ究極に近づいてきてるんじゃないかなっていうのはあります。
[黒田]
雑誌とかよりも交通広告って広告の中でも一つの大きな枠を占めてるわけじゃないですか。そこに出せるって、なかなか無いと思うんですよ。
[松野]
広告でバリバリやってる方でないとなかなか難しい気はしますよね。
[黒田]
自分も仕事で広告を撮るんですけど、交通広告の割合なんてそんな多くないんで、来たらうれしいなと思いますし、写真を仕事ではじめて良かったなと思う瞬間だったりします。自分の作品が出るという。無いですもんねそんな取り組みは中々普通に趣味でやっていたら。普通に好きな写真とった結果として、電車載ってますって、正気の沙汰じゃない(笑)
[松野]
なので本当に上手くアマナを利用してほしいと思います。
[黒田]
お話を聞いていて、何でもっと早くに知ってなかったんだろうっていうのはありますね。今回この機会でフォトグラファーの方にも見て頂けると思うので、そういう一つの発想として、自分の活動の中にストックフォトを選択肢として入れてもらえれば、いまのアマチュアフォトグラファーの活動の幅もだいぶ変わる気がしています。
貴重なお話をありがとうございます。
このあたりで、ストックフォトサービス ForYourImages ユニット ゼネラルマネージャー平井義浩氏も交えてストックフォトフォトグラファーからクリエイション、そしてアマナの理念にまでお話したいと思うのですが。
[黒田]
実は、周りに写真を撮るのが好きで、撮っている人という人はたくさんいるんですけど、ストックをメインでやってますっていう人はそんなにいないんです。
ヒーコ寄稿者にストックフォトでRM作家としてやられているAce Akiyama( @lapho_jp )さんという方がいるんですけど、これだけフォトグラファーがいる中で一人とかそういう割合です。色んな可能性があると思うんですけどね。
数ある写真系ウェブサービスの中からプラットフォームとして利用して自分を知ってもらうための媒体と考えると、いま真っ先に思い浮かぶ範囲だとやはりインスタグラムなどのSNSになってくると思います。他にはカメラ雑誌さんのコンテストや海外の写真SNSなど。その選択肢にもう少しストックフォトが入ってくると、露出やマネタイズの可能性の量を考えて魅力的な気がしますね。
[松野]
ストックフォトサービスはいくつもあるんですが、我々は今までのアサインメントの受託制作事業で培ってきた経験や技術力といった強みを持っているので、それら様々な情報を提供させていただきながら、 フォトグラファーのクリエイティビティ を 高めていきたい と思っています。
http://news.foryourimages.com/
クリエイター向けWEBマガジン「PORTFOLIO」と「ForYourImagesMAGAZINE」
[黒田]
そこはヒーコも規模は全然小さいんですけど、思想的には近いものがあると思っています。
やはり情報は活性化しないと意味が無いと思っているので。話は逸れてしまいますけど、日本は 日本語の壁 が大きいと感じていますが、内々で独自文化を築いていく性質があるなと思っています。携帯電話のガラパゴス化じゃないですけど。そうすると活発にならない、議論も動きも。漠然とした言い方ですけど、そういう風に考えていて、では海外はどうなんだろう?と目を向けてみると、国の一つ一つがものすごく突出してるわけじゃないんですけど、英語という共通言語があるおかげで、情報はものすごく活発なんですよね。
日本 VS 海外という構図で見たときに、アマチュアの情報力でいったら日本は負けているように感じてしまうんですけど、個体戦闘能力で言ったら日本のフォトグラファーって全世界横並びでみたときにめちゃくちゃ高いと思うんですよ。
VSアメリカとかでやっても全然高いと思いますし、ただ、日本のアマチュアフォトグラファーが今困ってるのは、構図が日本語VS英語だからなんですよね。この点に対する歯がゆさと問題意識からヒーコははじまっています。日本がもうちょっと海外の情報であったりとか、活力をインポートして、日本自体も情報を活性化して活発な意見交換であったりとか、情報の公開であったりとか、写真のアウトプットが行われたら、世界レベルでみても圧倒的な国になれると思っているので、ヒーコをはじめたんですけど、それを何十年前からやられてたってことですよね。
[松野]
やろうとしてきました。なかなか認知が追い付いていないかもしれないですけど、粛々とやってきたところはありますね。
[黒田]
先駆者がいたなと、思いました。こういう問題意識っていうのは、持ってる人は持ってるんだろうなって思ってたんですけど、アマナさんがまさにでした。
[松野]
もちろんクリエイティブなんで、譲れない、人に教えたくない部分は絶対あるんだと思います。そこは大切にすべきだと思うんですよね。なんですけど、それ以外の部分はどんどんオープンにしていって、コミュニケーションを活性化して情報交換していくともっと広がると思っています。
[黒田]
はい。そうですね。そうするといまの情勢もどんどん変わっていく。いま社会的にもすごく変革の中にいると思ってるのですが、だからこそチャンスというか、ただ写真やってただけなのにアマナさんみたいにプラットフォームやキャリアパスを用意してくれているサービスがあって、それを利用すれば自分がやりたいことを実現するための方法が色々あるじゃないですか。
昔ってそれこそ地道な活動しかなかったと思うんですけど、使えるものは全部使って、自分のポジションを皆取っていかないといけないなっていうのは思いますね。これは是非使ってほしいですね。
[平井]
自分としては、今までのアマナのやり方プラス、先ほど松野が言ったようにどんどんオープンに情報公開して、例えば今回のようなヒーコさんとの取り組みのように、組める所とは積極的に組んでいければと考えています。
[黒田]
自分がそういうビジョン持ち始めたときってこの1,2年の話なので、もっと前からこの考えをされてるのって、アマナさんであったりとか、他でも個人レベルでも、企業レベルでもあると思うんですけど、多分それをする必要が、そこに120%エネルギーを注ぐ必要がそこまで無かったというか。情報を持っている側は、もちろんそのノウハウで生計を立てられてるので、課題をアウトプットに対して感じるのはプレイヤーの末端側だと思うんですよね。
今どうにもなってない人たちと言うか。しかしそういう課題がだんだんと解決可能になってきている。末端って言ったら失礼ですけど、どうにもなってないフォトグラファーの人たちが問題を解決したいと思って実際に動きとして出てきたというか。
[平井]
方向性をまだ定められてない方々ということですよね。
[黒田]
ええ、自分が末端の人間なんで(笑)
[平井]
それはないです(笑)
[黒田]
多少形に出して来れましたけど、全然写真と関係ないところにいて、ゼロの状態から何となくやりたいことを個人レベルでやってきて、今こうなってきているので、それを多分もっとパワフルな人がやったら、結構フォトグラファー業界全体が変わるんじゃないかなっていうのはすごい思ってますね。
[平井]
フォトグラファー個人個人の考え方を変える必要もあるかなって思っていて、マインドチェンジをどうやるか。ストックフォトがきっかけでも何でも良いと思うのですが、アマナグループとしてそこのお手伝いが出来ると良いなって考えています。
[平井]
あと不思議なのは、写真は無料みたいなイメージが世の中的にはまだある印象。その為か、自分が撮った写真でお金をもらうということが悪と言うか、罪悪感 を持っている人が多い気がします。黒田さんの周りにもそう思っている方いませんか?
[黒田]
いますいます。続けていくと、負い目を感じても仕事である以上、どこかのタイミングでプロ意識というか、自分の作品には価値があるんだというのを堂々としてしないといけない。迷っててもそういうスタンスでいかないといけないなっていう気づきを得る時期は必ず来ると思います。
でも、アマチュアで写真をやっていて、本業は全然関係ない八百屋やってますみたいな人がすごく写真上手くてそれを結婚式とかで頼まれて撮ってみたいになったときに、その結婚式でお金を貰うってことに罪悪感を持ってしまう人もいるんですよね。
写真を買ってもらってお金を貰ってしまうことによって、自分の写真にそんな貰って良いんだろうかみたいな懐疑的になる人もいます。作家としてただオレは好きで撮ってるんだみたいなアーティスト気質というか、昔の職人気質みたいな人とかはお金のためにやってるんじゃないっていうスタンスを貫き通したいがために、お金を貰いたくないっていう人もいますね。
これ面白いのがBtoCだとお金貰わないとやらないっていう人もまた多いんですよ。CtoCだとお金貰うのはってなる人もいますし、結構何パターンかある。
[平井]
そういう雰囲気はなんとなく感じています。
[黒田]
もちろんケースバイケースで正解も無いでしょうし、どちらかというと相互の納得感という話だと思うんで、あんまり汎用化はできないと思うんですけど、ネットの素材は無料みたいな意識に関してはやっぱり変えていくべきだなとは思いますね。
あとは技術とかネットの写真情報だけでなく、さっきの勉強会の話もそうですけど、それが我々のミッションを抱えてる部分でもあるんですけど、情報を出すことによって、それを無料で書くけども、これには非常に価値があるっていうところも同時に示していかなくてはいけないと思っています。それを示すために、セミナーでは決して安くない値段を取って、この情報はすごい 価値 があるんだよと言うブランディングは保っていかないといけない矛盾を内包してるんです。
アマナさんの取り組みでもそうでしょうし、そういう矛盾の内在はあるのかなと思うんですけど、こういう矛盾とか葛藤とか、意見であったりとか、批判も含めて活性化につながってくと思うんで、そこで議論はあった方がいいと思っています。SNSでそういう話題になってもどんな感じでもそういう意識をみんなが、自分はどっちか考えるきっかけができれば最終的には良いのかなと思ってますけどね。
[松野]
お金が発生するこということは、必ずしも仕事ではないかもしれないですけど、何かしたことへの対価ということですよね。そう考えると、ストックフォトというのは、何らかの制作物やコミュニケーションに写真が必要な人がいて、そのためにフォトグラファーが写真を提供してその対価をもらうことで成り立っているんです。
ForYourImagesクリエイターエントリーページ
https://foryourimages.com/creator-welcome-page
[黒田]
そして力の入れ具合を自分に委ねられてる、裁量があるって考えると非常に良いですよね。出す分には好き放題撮って、全然売れもしない戦略もかけてないものであっても放り込めるは放り込めるじゃないですか。機能としては。
[黒田]
ただそれで売れるために取り組んで、1日でこういうスケジュールでこういうカットを撮っていこうっていって1日何パターンかとった写真を売ってくのって、後者はある種、自分がクライアントにもなり、自分で撮影をして全工程自分でやっている仕事みたいなもんだと思うんですよね、そしたらお金を貰うっていうところも逆に貰わないと本人もただ働きしたような気持ちになっちゃうでしょうし。
[松野]
次につながらないと思うんですよね。
[黒田]
そうですよね。そこの裁量とか力の入れ具合とか温度感を本人が決められるってなると、そういうスキームでお金を稼ぐ手段は、これまであんまりなかったと思うんで、発想が浸透さえすれば良いですね。あとは成果。
今までは大体時間を拘束されて、その時間内で何かをすることで、対価としてお金を貰うというのが、基本構図だったと思うんですけど、そもそもお金貰わないで趣味でやっていたことにちょっと仕事のエッセンスを加えることでマネタイズできるという発想。
簡単に言うと好きなことを仕事にするっていう誰もが夢見る流れの一つの答えと言うか、新しい形なのかなっていうのは今お話していて、思いました。
[松野]
そうだと思うんですよね。アサインメント撮影っていうのは、通常はアートディレクター(AD)やデザイナーがいて。ADがクリエイティブの方針や内容を決め、フォトグラファーにその撮影を依頼することが比較的多いと思うんですよね。ストックフォトはフォトグラファー自身がアートディレクションをしないといけないので、本当に自分の クリエイティビティ を試す形になりますね。
[黒田]
ですね。お話している中で自分の中でも整理されてきました。
[黒田]
最後にお伺いしたいのが、写真とアートについて。アマナさんはアートの分野にも足を踏み入れていらっしゃるなっていう印象があります。見方にもよると思うんですけど、簡単に語れない組み合わせなのかなって個人的には思っていて、アマナさん的なアートと、アート写真というのは何なんだろうっていうのはお伺いしたいです。
[松野]
アートと商業ってことですか。
[黒田]
そうですね。例えば何ですけど、ものすごいコンテンポラリな方に話を向けると、写真販売専門のギャラリーは基本的にあんまり無いと思っています。
無くはないんですけど、アートギャラリーとして写真置いてますというのはあまり無い印象です。
昨年アートフェアという東京国際フォーラムで開催されたイベントに行ったんですけど、様々なアートギャラリーがそこに所属する作家さんの作品と共に出展されていて、数百あるブースのうち写真の展示って2つくらいしかありませんでした。絵とか彫刻はたくさんあるんですけど。大体作品一つが何百万とか何十万とかで売れてるんですけど、写真で出してる人、10人もいなくて。驚きました。
まあここまでいくと究極なのであれですけど、絵的な意味でアートという見方もあると思いますし、クリエイティビティを写真に投影するとか、表現として写真を撮ることでアート写真とも言えるかなと思います。アートの定義はものすごく広いので。
難しいなって思ってるんですけど、その中でアマナさんの考えるアート写真であったりアートっていうのは何なんだろうっていうのをお伺いしたくって。
[松野]
僕はアート写真の専門ではないので、広告写真、商業写真のことしか話せないんですけど、さっきも言ったように、写真っていうのは情報を伝える手段でもあるんですけど、そこに感性を加えるっていうことにアマナはこだわってきました。
例えば花の写真なら、単に花が写ってるっていう情報だけじゃなくて、そこに「さわやか」とか「さびしそう」とか、そういう感性を加えることでより雄弁になるっていう。昔から 「伝えるから伝わる」 という話をよくしているんですけど、ただ単純に「伝える」んじゃなくてしっかり 「伝わる」 ことで、相手を 「行動に移す」 ことができると。
それがアマナのコーポレートミッションの “ビジュアルコミュニケーションを通して世界を豊かにする” という部分につながっていきます。アートフォトでもストックフォトでもビジュアルを活用したコミュニケーションを展開していくことで、人々のライフスタイルを豊かにできるかというところが、我々のミッションなんです。
[黒田]
想いを乗せるっていうのがまさにですよね。個人的にはそのくらい広い意味でアートっていう言葉が適切なのかわかんないですけど、区別したいですよね。記録的な情報としての写真ではなく、それが今無意識に趣味でフォトグラファーとして写真やってる人たちはやってることだとも思います。
レタッチ一つ取っても、いまのフォトグラファーは、自分なりの表現とか気持ちを乗せるとか、言語化できてはいないけど、ほぼ確実にやっている。それやってない人って逆にドキュメンタリーというか、新聞記者さん的な感じだと思うんですよ。
そういうところに意識を向けて、広告なんかは基本的には伝えるより伝わるじゃないですけど、訴求したい内容っていうのがあるはずなんで、そこに感性を乗せられて、かつフォトグラファーなりADの想いを乗せて制作する工程を一人でできるのが今の新時代のフォトグラファーなのかなとも思います。
それを無意識にやってるんで、そういうところをストックフォトとかを利用したりとかアマナさんが展開しているメディアもそうですし、様々なイベントもそうですし、そういう相互作用でどんどんフォトグラファーのレベルが上がっていくと良いなと思いますね。
[松野]
やっていることとか考えていることはすごいシンプルなんですけど、それを色んな形でやっているっていう感じですかね。
[平井]
アマナの創業者は元々フォトグラファーだったっていうのもあるから、クリエイターの働き方や環境にこだわりをもって経営してるのを肌で感じますね。
[松野]
こだわりを持ち互いに切磋琢磨しろ、それこそアマナの社員だっていうところがあるので、そこは強いですかね。
[黒田]
まさにですね。コーヒー一つとってもこだわりの極地みたいな。
オフィスに併設されたアートフォトギャラリーカフェ。コーヒーマイスターが煎じた特別なコーヒーでお客様をもてなす
[黒田]
本当細かいところ含めて、オフィスもそうですし、思いますね。
[松野]
そうなんです。昔からなんですけど、コーポレートコミュニケーション室という部署で、インナーコミュニケーションを担当していて、僕は最初そこにデザイナーとして入ったんです。で、グループ会社やサービスのロゴとかはもちろん、封筒だったり名刺だったり、備品にも、アマナらしいビジュアルを用いた表現にこだわっていました。
[平井]
細かいとこだと名刺の裏のデザインが色々あるんです。こうやって何枚か集めると一つの絵になったりするんです。
[黒田]
めっちゃ面白いですね!
[松野]
つながる というコンセプトなんですよね。
[黒田]
おお、なるほど。
[平井]
そういうのがあって、例えば何名かうちの社員と名刺交換していただくと。
どこかでつながるっていう。
[黒田]
なるほど、裏面のデザインが違うなとは思ったんですけど、つながってるんですね。
[平井]
僕の名刺だけだと作れないですね。
[黒田]
何名か必要ですね(笑)
[松野]
この写真選びも、すごく時間かけてるんですよ。これ。
[黒田]
そんなにこだわるんですか?
[松野]
2~3ヶ月かけて選びましたね。
[黒田]
えー!
[松野]
ええ、僕がやっているときはめちゃくちゃ時間かかりました。上司も厳しかったので、とにかく時間をかけて。
とことんビジュアルにこだわっていく、それがアマナグループなんです。だからこそ、ForYourImagesなど一般の方が参加できるサイトであっても他のストックフォトサイトとは違うと思うんですよね。そのこだわりに共感していただける方には是非ご参加いただいて、一緒にビジュアルを作っていきたいです。
[黒田]
とにかく素晴らしいと思います。また一つ、アマナさんの会社そのものが好きになりました(笑) 今回は、幅広くお話いただきありがとうございました。
松野正也
株式会社アマナイメージズ取締役/クリエイティブディレクター。1995年桑沢デザイン研究所卒業。デザインプロダクションで研鑽を積んだ後、アマナグループ入社。2016年より現職に就き、クリエイティブディレクターとしてコンテンツの調達とWEBデザインを統括する。
平井義浩
株式会社アマナイメージズ ForYourImagesユニット ゼネラルマネージャー。楽天株式会社でディレクター・プロデューサーを経験後、ベンチャー企業を経て2017年に株式会社アマナイメージズ入社。2018年3月より現職、ForYourImagesのプロデュースから開発全般を統括する。
クレジット
制作 出張写真撮影・デザイン制作 ヒーコ http://xico.photo/
カバー写真 黒田明臣
出演 松野正也 平井義浩
株式会社アマナ
http://amana.jp
amanaimages.com
https://amanaimages.com/home.aspx
ForYourImages
https://foryourimages.com
ForYourImages
amanaimages.com
株式会社 アマナ | amana inc.
参考
*ForYourImages.com(WEBサイトやオウンドメディアなどで使用する高品質なロイヤリティフリー素材を購入できるWebサービス)
*amanaimages.com(広告・キービジュアル制作に最適な日本人素材やハイエンドな海外ストックフォトが購入出来るWebサービス。動画素材やイラストも充実)
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2024年10月25日 発行
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