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シャンパーニュ地方への旅【ワイン航海日誌】

シャンパーニュ地方への旅【ワイン航海日誌】

2017年12月22日

時の流れは早いものですね。今年もクリスマス、そして新しい年を迎える季節の到来です。この時期は「シャンパーニュ酒が最も良く飲まれる季節」らしいのですが、故郷のシャンパーニュ地方とはどんな街なのでしょうか。

パリから150㎞ほどですので、フランスに着いてしまえばさほど遠くも感じないはず。というわけで、今日はご一緒にシャンパーニュ地方へと旅に出てみせんか?

現地に出かけるなら電車が一番だと思いますので、パリ東駅(Gare de I’Est)からTGVを利用します。1時間とちょっとの間、車窓に流れる美しい風景を眺めていれば、自然と心が踊るはずです。その間に、ちょっと思案を巡らせてみましょう。私たちは、なぜ今、シャンパーニュに向かうのか。ルイ15世の公妾であったポンパドゥール夫人は、「シャンパーニュは女性を美しくする唯一の飲み物」と語ったそうです。また、ある御方によれば、「パリに住んでシャンパーニュを愛でない人は、パリを半分しか楽しまない人生」とも。そう、だから私たちもシャンパーニュを目指すのです。

シャンパーニュ地方は、大きくエペルネとランスの街に分かれています。このふたつの街には、沢山の有名なシャンパーニュのメゾンが存在します。日帰りの旅では、せっかくの旅も楽しみ半減。ここは、ぜひ宿泊していきましょう。華やかなイルミネーションが輝くランスの街。新しい年がすぐ間近に迫っていることを感じさせてくれますね。

宿に着き、熱いシャワーを浴びたら、小一時間ばかりベッドに横たわって旅の疲れを癒してください。その後は、さあ、そろそろディナーの時間です。本場でシャンパーニュを楽しむ瞬間を迎えるワクワク感も、宿泊ならではの醍醐味ですね。

シャンパーニュを選ぶ時は、まず造り手であるメゾンを決めるのがセオリー。人数によっては、ボトルのサイズにも注目しましょう。食前酒ならごく普通の辛口(Brut)で充分だと思いますが、せっかく本場に訪れたのです。極上品のプレステージキュベやヴィンテージシャンパーニュ、ノン・ヴィンテージグラスなど、いろいろとお試しください。ロゼシャンパーニュや、この地域ならではのローカルカラー豊かなワインも試されると、旅の想い出がさらにイキイキとするはずです。

さて、翌日は、各メゾンを訪れてみましょう。この季節のシャンパーニュは、実は旅人も意外に少なかったりしますので、意外に時間をかけてもてなしてくれたりするんですよ。何軒かまわっているうちに、シャンパーニュを観察するだけの心の余裕も出てくるはず。たとえば、各メゾンでは自社の製品に合わせてグラスを選定していたりしますので、ここに注目するだけでもとても勉強になります。

グラスと言えば、50年ほど前の我が国のホテルやレストランでは、よくソーサー型のシャンパングラスが使われていたことをご存じでしょうか。別名「クープ型」とも呼ばれていて、フランスでも使われていましたが、日本製とは異なる部分がありました。フランス製のクープ型のステムには、穴が空いていたのです。この穴から澱を落とし、ガスを上に発生させていたわけですね。このグラスは、「アンシャン」とも呼ばれます。各メゾンの美術品コーナーに飾られていることも多いですので、ぜひ探してみてください。名称未設定-1

ところで、プレステージキュベやヴィンテージシャンパーニュでは、最近は大ぶりのワイングラスが好まれますよね。私も、某メゾンが贈ってくださったシャンパーニュグラスを愛用しています。名称は、ポンポン(Pompon)グラス。シャンパーニュ地方のスラングで、気の知れた仲間とシャンパーニュ酒で乾杯する時に元気な声で「ポンポン」と言いますので、この旅でも耳にしているかもしれませんね。

ポンポンとは、元々、フランス海軍の水兵さんが被るベレー帽の上に付いている飾り房のことを指します。赤い色をしていますので、海軍では「ポンポン・ルージュ」と呼ばれています。実は、シャンパーニュは昔から海軍と関係が深かったのですね。最近、結婚式などで「シャンパンピラミッド」「シャンパンカスカデ」と呼ばれる儀式を見かけますが、この時、サービスで開けるシャンパーニュを「シャンパン・サーベル」と言います。このシャンパン・サベラージュも、フランス海軍が発祥なんですよ。

…と、話題が尽きないシャンパーニュのメゾンめぐり。ここから先は、あなたと私、それぞれの探検タイムといたしましょう。どうぞ良い旅を…ボンボワイヤージュ。


著者:熱田貴(あつたたかし)
経歴:昭和13年7月7日、千葉県佐原市に生まれる。外国にあこがれ(株)日之出汽船に勤務し、昭和38年まで客室乗務員として南米、北米を回りワインに出会う。39年にホテルニューオータニ料飲部に。44年~47年までフランス・ボルドー、ドイツ・ベルンカステル、オーストリア・ウィーン、イギリス・エジンバラにてワイナリー、スコッチウィスキー研修。48年ホテルニューオータニ料飲部に復職。平成3年に東京麹町にワインレストラン「東京グリンツィング」を開業。平成9年に日本ソムリエ協会会長に就任。「シュバリエ・ド・タストヴァン」「コマンドリー・デュ・ボンタン・ドゥ・メドック・エ・デ・グラーヴ」「ドイツワイン・ソムリエ名誉賞」など海外の名誉ある賞を数々受賞。その後も数々の賞を受賞し、平成18年に厚生労働省より「現代の名工」を受賞、平成22年度秋の褒賞で「黄綬褒章」を受賞。現在は一般社団法人日本ソムリエ協会名誉顧問、NIKI Hillsヴィレッジ監査役などを務めている。

★ワイン航海日誌バックナンバー
【1】もう1人いた「ワインの父」
【2】マイグラスを持って原産地に出かけよう
【3】初めてワインに遭遇した頃の想い出
【4】冬の楽しみ・グリューワインをご存知ですか?
【5】仁木ヒルズワイナリーを訪ねる
【6】酒の愉しみを詠んだ歌人の歩みを真似てみる。

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