2017年6月29日
普段のお仕事についてかんたんにお伺いできますか?
いわゆる『経営/戦略コンサルタント』が主な生業です。少し昔は経営改革とか再生プロジェクトが多く、最近は新事業を立ち上げるプロジェクトに入ることが増えました。守秘義務の関係で詳細は言えないんですが、皆さんの生活に密接に関係している各社の裏方です。大企業相手の経営コンサルって、高そうなスーツきて横文字を偉そうにいう嫌味な人種というイメージがありますが、簡単にいうと『社長や経営陣、経営企画さん』のお手伝いをするパートのおじさんみたいなもんです。
自分が菊池さんの写真を拝見するようになった頃には、既にNature’s Best PhotographyASIAのグランプリをはじめ世界的に活動されていた記憶ですが、写真をはじめるようになったきっかけはなんだったのでしょうか?
元々、カメラとか写真が好きだったんですよ。祖父が何台もNikonの一眼レフ機や中判・大判カメラとか持っていて、幼い頃からそういうメカメカしたカメラに好奇心をそそられていました。しかし昔のカメラは高価だったので触らせてもらえなかった。だから余計にそそられていました。それと物心ついた頃から、野生動物や見たことのない大自然、宇宙とかに異常に興味があった。『野生の王国』や『野生のエルザ』という名作動物番組があって、それがはじまるとテレビ画面に釘付け。美しい写真で構成されている動物図鑑とか宇宙の本などは、飽きもせずに繰り返し眺めていました。
成長してからはLIFEとかTIME、アサヒグラフとかの報道系のグラビア雑誌。音楽が好きで買っていたRolling Stone誌とかRockin’onとかのカッコいいロックスターの写真とかね。一瞬にして心を鷲掴みされるような写真を見る機会が多かった。もちろんエッチな写真もね。音楽、映像、写真の力にはずっと昔から惹かれていました。
で、ある時祖父が自分のコレクションから1台くれたんです。Nikon F3。ちょうど高校卒業の頃。それからおじさんになるまではたまに持ち出して撮るくらいだったけど、向き合い方が大きく変わるきっかけは東日本大震災でした。あの時、テレビやネットを通じて数々の映像と写真が目に飛び込んできました。無力感や絶望感にとらわれるものが大半のなかで、ある2枚の写真に心をつかまれました。一枚は瓦礫の中から自衛隊の隊員さんが生まれて間もない赤ちゃんを救出した時を活写したもの。もう一枚は、なでしこJapanが初めて金メダルを獲ったときに、勝利のピッチでキャプテンの澤さんが国旗を背にまとった写真。それらを見たときには、魂をゆさぶられるような思いがしましたね。
写真てすごいもんだなと。それで、その時になんとなく「自分もちゃんと写真を撮っていこう」と思ったんですよ。本格的に探求・工夫と試行錯誤しながら撮るようになったのは、その頃からかな。
それまでは、ただシャッター押すだけ(笑)
社会人として働きながら(しかも異様な忙しさで)、写真という趣味を持つことは相応の楽しみや意義を見出していないと中々生活に取り入れられないと思うのですが、写真の魅力について少しお話ください。
そう見えるだけで、大して忙しくはないです(笑)すごくアクティブな人間と思われることが多いんですが、もともとは面倒くさがりな性格で、だらだらしていたい人間です。
一方で、歳を食って肉体は明らかに衰えてきているけど好奇心はあまり衰えていない。「近くで見てみたい・感じてみたい」と思える対象が出てくると、「写真に撮ってみたい!」スイッチが入って、だらだらモードから行動に移る。もしカメラと写真が無かったら、自分の場合は「見てみたいなぁ。いいなぁ」と思いながらも、すぐに忘れてダラダラしているか、仕事してるかでしょうね。行動に駆り立ててくれるトリガーみたいな存在ですかね。ただし、スマホカメラとかではテンション上がりません。
撮られている写真についてですが、アラスカ渡航やアジア・国内など幅広く旅をされていますよね。菊池さんにとっての「旅と写真の関係性」について教えてください。
物心ついた頃からの大自然、野生動物好きはお話した通りですが、東日本大震災を機に仕事の仕方・働き方は意識的に変えました。WORKは当然大事だけど、ぼちぼちLIFEWORKをもっと大事にしようと。普段はどうしても仕事中心になるけど、年に数回はまとまった休みを取ります。
そういうことをなるべく自由にやれるように、ひとつの会社組織と雇用関係を結ぶ働き方はしていません。それで、旅すると予想もつかなかった出来事や出会いがありますよね。
まさに人生の一部を凝縮したような濃い時間が生まれることもあったりで、それが面白い。経験上良い偶然が起きることが多い。そうすると自然に写真を撮りたくなる。自分ではLIFESCAPEしているつもりでいます。
菊池さんは非常に強力な個性の持ち主という印象なのですが、写真を拝見しているとその個性は影を潜め、ありのままの景色を美しく切り取っている静かな個性に変貌しているように感じます。このあたりは初めてお会いした時に感じた一番のギャップです。このあたりってご自身ではどう考えていますか?
能動的に周囲に働きかける・どんどん行動する・自分の考えを明確に出す。仕事をしているときや街中で人の中にいると、そういう一面が出るのかもしれません。一方、どこかに出向いて行って写真を撮るときにはモードが自然に変わります。特に都市部や日本を遠く離れて、圧倒的な大自然の中に入っていったときなどは、『目の前でおきる光景を細大漏らさず見たい・受け入れる・感じたい』というように、心を100%振り向けたいと思っています。その時に感じたままを写真にしたいと思っているので、そのように見えるのかもしれませんね。
デキるビジネスマンとして、デキるフォトグラファーとして、幅広くご活躍中の菊池さんですが、両立するためのコツや両者の相互作用などについてお話いただけませんか。
両立するコツは簡単で、やりたいことをやる時間を無理にでもこじあけるってことですかね。もっと早くからそうするべきだったと、昔を振り返ると後悔することばかりです(笑)二兎を追うもの。。。は昔話で、三兎も四兎も追う方が面白いですから。『写真すること』と『仕事すること』は似ている部分が多々あると思っています。
偶然・ラッキー頼みでいても、幸運の女神が何回も微笑んでくれることは無い。周到に・緻密に準備して、あれこれ仮説と検証を繰り返す。自然や野生動物を撮るときは気象や独特の習性・行動特性を調べ尽くして、先読みできるようになることが必要ですよね。街中でスナップするときも、先読みして撮るべきタイミングを待つ・つくるようにすることが肝だったりするじゃないですか。
そして撮るだけでなく、ポストプロセスもあります。そういう一連のプロセスを楽しみつつ形にしていくのって、似ていると思うんですよ。WORKもLIFEWORKも、どっちも楽しめるようにやりたいと思っています。
菊地 英俊
京都大学工学部卒(化学工学専攻)。リクルートのHR事業部門にて営業・事業企画・海外事業開発等を10年に渡り経験。その後、ICMG創業に参画。経営コンサルタントとして日立製作所グループのグループ経営改革プロジェクトはじめ、他業種に渡り経営・組織変革プロジェクトや新事業創生プロジェクトに従事。祖父から譲りうけたフィルム式一眼レフカメラをきっかけに写真に魅了される。仕事の合間に国内外の自然豊かな場所へ冒険旅に出るのが生き甲斐。旅と写真はライフワーク。
【受賞歴等】
東京カメラ部10選2014
Nature’s Best Photography Japan 2014年度グランプリ
SIGMA Photo Contest2015 優秀賞
Nikon「山のある風景写真」フォトコンテスト2015 優秀賞
National Geographic Daily Dozen, Editor’s Favorite, contest gallery pick up
他、受賞多数。
【書籍掲載】
何気ない風景をダイナミックに変える絶景写真術(インプレス)
フォトコンライフ「傑作のキーワード」(双葉社)
Nature’s Best Photography 20year Anniversary “Best of the Best”(NBP)
他
制作 出張写真撮影・デザイン制作 ヒーコ
http://xico.photo/
カバー写真 黒田 明臣
出演 菊池英俊
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2024年10月25日 発行
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