2023年11月23日
日本を代表する名バイプレイヤーのひとりとして揺るぎない地位を固める小日向文世さん。来月12月からは、人気作品『海をゆく者』の再々演に出演する。
アイルランドの劇作家コナー・マクファーソンの出世作として知られる同作は、日本では2009年と2014年に上演された。5役中4名が過去2公演と同役を務める今回は、平均年齢が70歳目前に。今やそれぞれに押しも押されぬ名優へと成長した彼らは、過去の自分とどう向き合うのか。今月の特集である「ふるさと納税」の話題を交えつつ、話題作の上演を控える今の心境をうかがった。
|『海をゆく者』の再々演のお話を聞いた時の率直なお気持ちはいかがでしたか。
PARCO劇場の開場50周年という年に、記念シリーズの作品のひとつに選んでいただいたことは素直に嬉しいですね。とても光栄に思っております。
|名作とは言え、この作品にみたび向き合うことになるとは想像しておられなかったのでは。
そうなんですよ、再々演のチャンスに恵まれるなんて、まったく考えていませんでした。ただ、俳優仲間からは、よく「もう一度観たい作品」と言われる作品なので、新たに挑戦する機会をいただけたのは本当に喜ばしいです。
|初演が今から14年前ですから、50代の頃ですよね。
若かったですねえ(笑)。ちなみに、今回は60代最後の舞台になるんですよ。私だけではなく、今月はじめに70歳になられた平田満さん以下、4人とも。
|え、皆さん全員がですか!
もちろん新メンバーの高橋克実さんは除きますけどね。私は地方公演中に、浅野和之さんと大谷亮介さんは公演期間のすぐ後に、それぞれ古希を迎えます。そんなわけで、みんなで舞台に立てることに深い感慨を覚えると言いますか、何とも言えない気分になると申しますか(笑)。
|同じ作品だからこそ、逆に初演当時との体力的な違いも味わいのひとつになるわけですね。
この作品はポーカーが物語の軸になるのですが、ウイスキーを痛飲してベロベロに酔っぱらった状態で興じるシーンがあるんです。でも、再演から数えても9年が経過していますからね。歳を重ねた我々が、過去の自分とどこまで戦えるのか(笑)。私自身も、今から楽しみなんです。
|地方公演と言えば、今月のビズスタは「ふるさと納税」特集なのですが、小日向さんはご経験がおありですか。
私はこれからなんですよ。故郷は北海道三笠市なのですが、旧三笠町の時代に祖父が町長を務めていたことがありましてね。それもあって、生まれた街に貢献したいという想いは年々強まるばかりなので、私もふるさと納税を活用するつもりでいます。
|三笠市なら、小日向さんの母校である三笠高等学校の調理部・製菓部・地域連携部の活動の場としてレストランが運営されていますが、その施設の維持管理に活用してもらうという選択もありますよ。ふるさと納税は使途を指定可能ですので、母校に直接的に貢献できますね。
それはすごい、私にぴったりの使途じゃないですか(笑)。さっそく調べてみます。思い入れがある地域を積極的に応援できるという仕組みは素晴らしいですよね。時間ができたら、じっくり学んでみようと思います。
|では、『海をゆく者』を楽しみにしているビズスタ読者に向けて、熱いメッセージを。
登場人物全員に、それぞれ異なる人間像が濃厚に描かれていますので、初めてご覧になる方はそのあたりにご注目いただけると嬉しいですね。過去の上演をご鑑賞いただいた方なら、もちろん演技や演出の比較をお楽しみいただけます。そもそも古希を迎える年齢の俳優ばかりを集めた舞台って、あまりないのでは(笑)。でも、歳を取ることは円熟味を増すことでもありますので、ぜひ足をお運びいただきたいですね。
小日向 文世 さん
1954年生まれ。北海道出身。1977年にオンシアター自由劇場に入団。1996年の解散まで中核的な存在として数々の舞台で活躍。解散後は映像にも活動の場を広げる。最近の主な出演に【舞台】『ART』(23/小川絵梨子演出)『アンナ・カレーニナ』(22/フィリップ・ブリーン演出)、『スカパン』(22/串田和美演出)、『私の恋人beyond』(22/渡辺えり演出)、【映画】『湯道』『イチケイのカラス』『コンフィデンスマンJP 英雄編』『マスカレード・ナイト』、【ドラマ】『下剋上球児』(TBS)、『競争の番人』(CX)、『嫌われ監察官・音無一六』(TX)『緊急取調室』(EX)、など。2011年「国民の映画」第19回読売演劇大賞 最優秀男優賞を受賞。2012年「アウトレイジビヨンド」第86回キネマ旬報ベスト・テン助演男優賞を受賞。
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2024年10月25日 発行
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