2024年5月30日 PR
空気清浄に関する国際標準化委員、日本代表野崎教授に空気清浄機に期待する機能と性能評価の新基準について伺った。
新型コロナウイルスやPM2.5、花粉など空気中には我々の暮らしを脅かす汚染物質が多く浮遊している。空気清浄機はその対策の1つだが、性能について広く認められている判断基準はなく、本当に優れた製品を選ぶのは難しいのだとか。
この状況を打開すべく、現在、国際基準を示す試験法が確立されつつある。室内環境の研究者としてその策定に関わり、経済産業省の空気清浄機国際標準化委員会の委員長も務めてきた東北文化学園大学の野崎教授に、空気清浄機が果たすべき役割を伺った。
―我々を取り巻く空気環境において懸念される点をお聞かせください。
野崎=大気汚染もさることながら、問題となっているのは密閉された空間の空気汚染です。「室内空気汚染」といい、汚染物質の濃度が外に比べて非常に高い。しかも人は1日の80~90%も室内に滞在し、その空気を呼吸しています。この時、室内空気質(IAQ/インドア・エアー・クオリティ)が劣悪であると健康被害が現れるため、これを改善する技術があってしかるべきと考えます。
―具体的にはどのような物質が暮らしに影響を与えるのでしょうか?
野崎=まずほこりです。特に微小粒子のPM2.5。こうしたものを吸引すると気管支炎、喘息などの疾病が起こるという因果関係がわかっています。それからガス。ガスとは化学物質と臭いです。化学物質でいえば、ホルムアルデヒトやトルエンなどはシックハウス症候群の原因として有名です。
また臭い物質は、それほど健康に害はないのですが、不快に感じます。例えばトイレに関係するアンモニアや硫化水素、メチルメルカプタン。メチルカプタンは生ゴミ由来やペット由来のこともあります。
3番目が微生物。ダニ・カビ・花粉ですね。日本では湿度が高いとヤケヒョウダニ、コナヒョウダニが増えます。これらの糞や死骸が空気中を舞いますが、吸引するといろいろなアレルギー疾患が起こります。そしてカビはカビはアスペルギルス、クラドスポリウム、ペニシリウムなどいろいろな菌種が室内に存在しています。これらのカビの胞子・菌糸が室内に舞い、アレルギー疾患の原因になることがわかっています。それから花粉。スギ花粉などは大きな粒子ですが、砕けて小さな形で室内に入ってきます。
最後にウイルスですね。今般、有名になった新型コロナウイルスや、昔からあるインフルエンザウイルスといったウイルスも空気清浄機で除去することが期待されます。
―特に小さな粒子の汚染物質は、さらに影響が大きいのでしょうか?
野崎=比較的大きな粒子であれば、人体の機能で排出されます。例えば喉の粘膜に大きな粒子がついても、線毛運動によって気道の上へ送られ、痰として排出されるのです。これに対して非常に小さな粒子、100ナノメーター未満の超微粒子です。こうした粒子は肺胞の中に入ったり、肺胞を突き破って血液中にまで入ることが最近の研究でわかってきました。
―これらの物質まで除去されることが望ましいということですね。そうした空気清浄機の性能を評価する国際基準の整備は、どのくらい進んでいるのでしょうか?
野崎=現在、空気清浄機の国際委員会が立ち上がっており、私はその中のガスの分野の委員長を務めております。またIEC(国際電気標準会議)、ISO(国際標準化機構)の合同委員会も立ち上がっています。そしてまもなく国際標準化の試験法が運用される段階まで来ています。
運用が実現すれば国内の基準整備も進み、実力のある空気清浄機だけが生き残り、そうでない空気清浄機は淘汰されていくことでしょう。また海外と国内の製品の比較もより容易になります。
こうした機運を受け、この夏、衛生対策や医療について取り上げる各種の学会でも、空気清浄機の展示が行われるとか。国際基準の運用により、性能のいい空気清浄機が選びやすくなり、我々の生活がより安心で快適になることを期待したい。
野崎 淳夫
東北文化学園大学
大学院健康社会システム研究科 教授
建築環境学科 教授
厚生省国立公衆衛生院客員研究員/ 国立保健医療科学院客員研究員、国土交通省・経済産業省・厚生労働者省・林野庁合同委員会「室内空気対策研究会」試験評価法WG主査、国土交通省研究委員会「シックハウス総プロ」設計施工部会主査、日本建築学会室内空気質WG 幹事などを歴任し、現在、IEC TC 59 PT 63086(Air Cleaners)のConvenor, Expert として、JEMA(日本電機工業会), ISO 委員会, ISIAQSTC22(Air cleaner)と連携を図りながら、空気清浄機試験法を策定している。室内空気環境問題の解消に寄与する研究活動を推進中。
●第74回日本病院学会
日時:2024年7月4日(木)~5日(金) 会場:三重県総合文化センター
●第39回日本環境感染学会総会・学術集会
日時:2024年7月25日(木)~27日(土) 会場:国立京都国際会館
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TEL: 03-3668-1861
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2024年09月27日 発行
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